待つ日々

 ひさしぶりな人たち、初めての人たちといっしょにお酒を飲み、深夜まで語った。
橘川さんとはしょっちゅうメールでやりとりしているけれど、いっしょに泊まりがけで出かけたりするのは十年ぶりだった。
 私はなんで橘川さんが好きなのだろう。この人を憎んだり嫌ったりする人っているのだろうか。ものすごく穏やかでほわんとしているのに、考えていることは誰よりも先鋭的だし、破壊的だし、建設的なんだ。橘川さんと会話していて、むなしくなったり、つまらなくなったり、絶望的になったりしたことは一度もない。だからって、ポジティブシンキングみたいな人でもない。やっぱり不思議な人だなあと思う。
 なにより尊敬しているのは、橘川さんは絶対に対立構造で物事を発想しないところ。地方対都会とか、企業対消費者とか、店対顧客とか、本屋対ブックオフとか、あたかも利益を競い合っていたり、利害関係があるように見えることを語るにも「だって、対立したらつまんないじゃん」「そういうふうに考えると損するじゃない」と言う。なるべく世界を二極化したり、対立構造で見ないように気をつけているんだけれど、橘川さんに会うと「ああ、またやっちゃってるなあ」ということに気がつく。橘川さんを見てるだけで、なんだかじんときて泣けてくる。いつもタメ口なんだけど、ほんとうは心で手を合わせてる。まるでお地蔵さんみたいな人なんだもん。
 そして、私が橘川さんと近くなるときは、たいがい、私が新しいことを始める時だった。作家になる時もそうだったし、海外出版する時もそう。だけど、今回は自分が次になにを始めるのがまだわからない。
 あれが、やってくるのを、待つしかないなあ。
by flammableskirt | 2008-05-31 17:01

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