近況報告

体調悪く、二日ほど休養する。ひどくふくらはぎがむくむ。たぶん腎臓が疲れている。暑くなったので冷たいものを飲みすぎたためか。

 石川県羽咋市から、友人の高野さんを呼んでの講演会。テーマは「地域活性化」だが、高野さんの話は「地域」を越えて「世界活性化」であり、ほんとうに面白い。こんな面白い話しを少人数でじっくり聞いて、質疑応答もたっぷりあり、二次会も充実しているというのだから、企画した瀧山さんはエライ!来てくれた人は、たいへんラッキーだったと思う。高野さんの話しは、もっといろんな人に聞かせたいなあ、と改めて思った。なんとかしよう。

東京拘置所に林泰男さんの面会に行ってきた。絵はがきの差し入れをしようとしたら「これって、手書きですよね?ダメです」と戻された。娘の手づくり絵はがきだった。なぜ手書きではダメなんだ?
「窓口では書き込みされたものは扱えないんです。そういうきまりです。それから絵はがきの差し入れは10枚までです」
「以前は24枚ではなかったですか?」
「いまは10枚です」
 このあいだの法改正で減らされたらしい。なぜ差し入れの絵はがきの枚数まで減らすのだろうか。絵はがきというのは死刑囚が自分の肉親や友人(それも3人までと限定されている)に近況のやりとりをするのに使うもので、私には、たぶん誰かが差し入れた「トンパ文字」のかわいい絵はがきが林さんから届く。だから、その誰かには私の絵はがきを送ってほしいと思って差し入れしたのだ。ハガキ類は拘置所内の死刑囚が限られた交流者とコミュニケーションするために必要なもので、それをなぜ枚数制限などするのか、その理由がまったく不可解だ。
 こんなことは、文字で読めば「それがどうした」という程度のことなのだろうが、実際に拘置所の窓口で差し入れした絵はがきを「10枚まで」と理由もなく減らされるときの、なんともやりきれない、目の前に灰色の壁が立ちはだかるような息苦しさは、経験して初めてその「壁」が見える気がする。経験するって、辛いが、身体でわかるところが面白い。

地下鉄サリン事件の被害者の会の高橋シズエさんの著書「ここにいること」を読んだ。できる限り被害者の方の手記は読むようにしている。自分が加害者と交流しているから、たぶんバランスを取ろうとしているんだろう。本のなかに林さんに関する記述があり、それを読むと、私が知りえている林さんの現在の感情、考えは(当然のことながら)外部には伝わっていないのだ、とわかり、しかし、当事者でない私が、当事者の人たちになにをどういうふうに伝えたら、両者の心が少しでも楽になるのか、わけがわからず途方に暮れる。

 ほんとうに途方に暮れてしまい、松本サリン事件の被害者である河野義行さんを訪ねて話しを聞かせてもらった。そのことはいつか、まとまった文章で書きたい。河野さんには、ものすごく励まされた。あれほど辛い苦しい経験をしている人が、他人を励まし勇気づけ、希望を与え続けている。自分がどういう生き方を選択すべきか、強烈に迫られた。私がどう生きるか。それだけなんだ。

橘川幸夫さんのところへ行って、月末の湯河原温泉合宿の打ち合わせをする。今回のテーマは「地域活性化」だ。そのあと新宿文化会館で江原啓之さんの講演を聞く。江原さんを生で見たのは初めてだった。テレビで見るよりももう少し太い感じがした。ころんとしていて体形が「となりのトトロ」そっくりでかわいかった。講演の最初からマスコミのバッシングを怒っていて、よほど悔しいのだなあ、と思った。でも「私は絶対にめげたりしないんです。だって、大我でやってるから」と宣言していた。大我というのは、人のためを思う心、つまり菩提心のようなものだろうか。60冊の本を書いていて、言いたいことはすべて書いているから本を読んでから話しを聞きに来てほしい、自分はスピリチュアルカウンセラーであって、そこらの霊能者とは違うとも力説されていた。

 興味深かったのは「ネットカフェ難民になっている若い人は、想像力が足りないんです」と評していたことだ。誤解を招きそうな発言だけれど、一理あるかも、とも思った。いつも、ネットカフェという言葉から「蜘蛛の巣にひっかかった虫」がイメージされるのだ。ネットというのは人間の精神をからみとる妙な呪縛性をもっているから、もし、精神の自由を得たいのであれば、ネットカフェには近づかない方がいいと思う。この文章をネットカフェ難民として読んでいる人がいたら、そこは蜘蛛の巣だから、とにかくその場所から逃げて外に出たほうがいいよ、とアドバイスする。その場所から出て、もよりの新聞専売所に行き、そこで住み込みで働くか、あるいは専売所には新聞折り込み広告がたくさんあるから、地域版の求人広告をタダでもらい(その地域限定の求人広告がけっこうたくさんある)、それを読んで住み込みの就職先を探すほうがいいと思う。都会よりも、都市近郊の町工場など多い地域に行って、そこの新聞販売店で地域版の折り込み求人広告をタダでもらい、職を見つけてはどうだろうか。

六本木の「島唄楽園」で、久高の酋長と再会。久しぶりに逢った酋長はお腹がすっかりへっこんで痩せていた。ダイエットした、と言っていたが少し心配。久高島にもずいぶん行っていない。酋長とは年に一度、六本木で逢うばかり。今回はしばらく滞在するそうなので、うちに泊まりに来てくれるように誘ったが、ファンが多いから無理かもな。しばし、沖縄な夜を楽しむ。
 久高島の畑は島の畑。ひとつの共同体として、久高島には久高経済が成立している。あそこでは人は金がなくても生きていける。酋長に会うと、自分はセコイなあと、改めて思う。所有にこだわるとセコイが、そういう社会に生きている以上、しょうもない。どうしても嫌なら、自分で生きる場所は自分が見つけるしかない。べてるの家の人たちのように……。
by flammableskirt | 2008-05-25 11:17

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