ご都合さまと未来

 名前を忘れたが、ブラジルの今世紀最強の預言者をソフトバンクが呼んでいるのだそうだ。いまもそのお方は日本にいらっしゃるらしい。この預言者は「9.11」を予言したことで有名だが、ただ予言するだけじゃなくて「おたくの国でこういうことが起こりますよ」と内容証明付きで予言内容を郵送するのだそうだ。送られた国はさぞかしびびるだろう。
 その預言者の本が出版されたらしい……というのを、知り合いからまた聞きした。噂によると「今回の四川省の地震も予知してたんだけど、発表はひかえました……」みたいなこと言ってるらしい。ほんとか嘘かわからないが、もしそうだとしたら後出しじゃんけんはセコイよね、という話で盛り上がった。予言とか予知という話題はなぜこうも盛り上がるのか。そして四川省の地震のどさくさでまたチベット人僧侶がいじめられてんじゃないか、とか、どうもチベット問題が下火になってしまってまずいとか、四川省には中国の核施設がたくさんあるから、あれは地震ではなく核実験じゃないかとか、そんな話まで飛びだして収拾がつかなくなった。人はそれぞれ部分的にいろんなことを知っているが、部分を継ぎ合わせるとフランケンシュタインみたいなものができ上がるから怖い。
 ちなみに日本に関与するかもしれない大きな地震の危険日は「9.13」だそうだ。その日は土曜日で「もし大地震が来るとして、その日、どこで誰と過す?」と聞かれたが、良いアイデアは浮かばなかった。やはり家で家族と草でも植えているのだろう。揺れたらじいさんとばあさんを背負って逃げることになるが、二人は骨と皮で軽いからなんとかなるだろう。足腰は鍛えておかにゃいかんな、と思う。
 どうして未来を予知できるんだろうか?ということを考え出したら、やめられなくなった。
 未来というのは現在の延長である。連綿と続く「今」が未来になっていく。私の意識できる今と、意識できない今がある。たとえば、最近私は胃の調子が悪いくせについ脂っこいものを食べてしまう。脂っこいものを食べているという今の現実の先に胃がんとか腸がんという未来があるのかもしれない。これは自分で変えられるかもしれない。いまやめればいいのである。だけど、たとえばある組織に所属している人たちが、集団で意識的に化学物質を垂れ流しにし続けている……というような場合、その人たちは未来予測可能だが、私にはできない。私はその人たちの未来に巻き込まれるだけだ。いや、もしかしたら、私がこの社会に生きているということは、この私の弱さやダメさを無意識に社会に投影し、それが今のダメ政府を作り、金満主義の社会を作っており、その社会の中で生きのびるために企業は自分の悪を隠ぺいし、その企業も個々の人間の弱さを投影されてでき上がっているとしたら、社会は私が見ないことにしているご都合主義によって未来を選択しているのかもしれない。個人が無自覚に投影している「ご都合さま」は、おそるべき入れ子構造になっており、それぞれの投影が未来が紡ぎ出しているとしたら、恐るべき未来という布の糸の一本は私ということになるのか。なんて考えていたら、頭がこんがらがってきたのでやめた。
by flammableskirt | 2008-05-19 12:01

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