勉強の仕方
2008年 04月 17日
「わたし、いまはもうちょっとできると思う」
……という、根拠のない自信をもっている我が子は、やっぱり受験すると云いだした。
「あんたさあ、去年の偏差値38だよ、これから一年もないんだよ」
「でも、やるだけやってみたい」
やっと、アル中のがんオヤジが亡くなって、やれやれと思ったら、今年は受験かい。
あんた、地元の中学でいいって言ってたじゃないか。友達もみんな行くから近くの学校がいいって、そう言ったじゃないか。
「どうして急に勉強する気になったの?」
「うーん。なんか自分の力を試してみたくなった」
あ、そ。
「おかあさんは、受験してほしくないの?」
「受験してもいいけど、受験勉強をしてほしくない」
「どうして?」
「ああいう勉強の仕方を覚えると、将来、なんでも答えを求める人間になりそうで怖い。あんたは今だって、すぐに答えを求めようとする。それがいやだ」
「答えを求めちゃいけないの?」
「正しい答えがあると、信じてしまっているところが、気持ち悪い。どこかに誰かが決めた正しい答えがあって、その答え通りに正解したら正しいと、盲信しているところがいやだ。答えは自分で考えるものだし、その答えが正しいかどうかも自分で考えなければ、けっきょく、他人の言いなりで人生を送ることになる」
「うーーーん?????」
「あんたは、出来ない問題、習ったことのない問題を見ると、これは習ったことがないからわからない、ってすぐ言う」
「だって、習ったことないからわからないもん」
「人生は経験してないことの連続なんだ。習ったことのないことが出来ないなら、会社に行って仕事なんかできない。習ったことのない問題にどう対処するかが重要なんだ。できないと思うとすぐにつまんなくなる。ちんぷんかんぷんになる。そして、たいくつして、イライラして、暗い気持ちになるだろう?」
「……うん」
「それは、問題の答えだけを求めているからだ。問題について考えず、答えを出すことばかりに焦っているからだ」
「だって、問題があったら、答えを出すのはあたりまえじゃないの?」
「問題の答えは、問題にある。特に、文章題はそうだ。問題の答えは問題のなかにある。これは人生全般すべてそうだ。問題を解読できない限り、自分で答えを導けない。文章問題というのは、生き方と似てるんだ」
「そんなこと、初めて聞いたよ」
「問題は言葉で書かれているだろう、人間の問題は全部言葉で思考する。言葉を使って問題を作っているのであれば、人間関係も算数の文章題も、問題は問題を構成している言葉でできていて、その解決策も、問題のなかにしかない。それが言葉の限界だ」
ワインを呑みつつ、ここまで気分よくしゃべったら、子どもはテーブルの前で考え込んでいたが、だんだん、めんどくさくなったらしい。
「わかったよ。とにかく自分で考えて、勉強するから。それならいいでしょ」
「いいよ」
「よーし、がんばるぞ〜!」
あーーーーーーー。やだ。また今年も、ややこしいことになってきた。
by flammableskirt
| 2008-04-17 09:18