犬と人は1万2千年も前から、家族のような関係にあったらしい。
イスラエルで発見された新石器時代の老婆の遺骨は犬を抱いた姿で出土した。近親者が老婆に寄り添わせたのだろうと、犬の研究家が言っていた。
ホモサピエンスは犬と一緒に狩猟をしていたという設がある。ネアンデルタールとホモサピエンスが共存していた時代、屈強な肉体を持つネアンデルタール人は、野生動物と格闘するようなガチの猟をしていた。我々の祖先であるホモサピエンスはと言えば、身体は脆弱。なので集団で猟をした。ホモサピエンスは弱いからこそ、生き延びるために他者と協力しあい、動物たちをよく観察した。観察することで他者の気持ち、動物の気持ちを察することができ、動物の行動パターンを読みつつ狩をした。感情的な豊かさが殺した動物たちの鎮魂の儀礼へと結びついていった。犬とも協力して狩をし、長い長い時間、ずっと犬と心を通わせてきたのだ。
弱いから、智恵を絞った。道具を発明した。弱いから共に生きてきた。豊かさと反比例に孤独でプアになった人間を、犬はいまも救っている。力による支配には限界があることを知っていながら、力はまだ人を魅了する。人類の歴史を思うと、核兵器で強さを誇示することの危うさを思う。私たちは弱くていいのだ。弱いことは尊い。弱いからこの地上で他の生き物と共生してきた。強くなれば智恵を使わなくなる。そして、いつか滅びる。
この地上の食物連鎖の頂点に立った人間は、すべての生き物がこの地上でバランスよく共生するために智恵を使う役目がある。それが人間の地球上での美しく尊い役目。人間として生まれたことに意味がある。地球の多様性とバランスに貢献し、すべての生き物のために祈ること。私たちは弱くていい。愛と智の門は弱者に開かれている。