これは最後のチャンス

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Covid-19の始まりの時から、ずっと、聞こえている声がある。
声なき声として頭に響くんだ。

「これは最後のチャンス」

もう十年も昔から、いやもっと前から気づいていたことだ。
いつまでもこんな大量消費の時代は続かない。どこかで変わらなくてはって。それは、地球が滅びるとか、そういうSFみたいに壮大な話ではなくて「それって人間としてやっちゃいけないよね」っていう感覚だった。「こんなのは間違っている」ということ。
とっても単純なことだ。資源を奪い合って殺し合ったり、めちゃくちゃな暴力を人に対しても、動物に対しても、自然に対してもふるってはいけない。誰かが飢えていたら分かち合わなければいけない。そんなあたりまえのことだ。子供にだってわかるあたりまえの道徳だ。
それが、できてないよねってこと。

「これは最後のチャンス」

そう思った人はきっとたくさんいるんじゃないかな。私だけのはずがない。だけど、もとの社会に戻って物に執着しなさいという呼びかけもすごく強い。お金がないと困るでしょう。国力がないと不幸になるでしょう。経済力がないと……と。
ワクチンというものがCovid-19の解決策だと政府が言い、製薬会社はお金持ちの国にワクチンを売る。でもさ、世界が繋がっているからウイルスは拡散したのだよね。この繋がった世界で貧しい国の多くの人たちにもワクチンが行き渡らなければこの感染は解決できないことは、子供だってわかるはずなのに。わかちあえていない。

だから、これは神さまが最後に与えたチャンスなんだ。
ワクチンが解決策なんじゃなくて、ワクチンをどんなふうに分け合ってていくかということを、みんなで考えることが、ほんとうの意味での解決策なんだ。みんなが助かるために何をしたらいいか、どう行動したらいいか、そのことを考えれば、なにが大切かを思いだして、もっと根本的な社会的課題に立ち向かえるかもしれない。必要なのは「物」をどうわけあうかという話しあいのほうだ。

Covid-19の感染が始まった時、みんな思わなかった? 
これは、何かの啓示かも。人類への警告かも?って。

ワクチンが出てきたら、ワクチンの取りあいになったり、買い占めになったり、ワクチンが買える国では打つか打たないかでもめたり。ワクチンをめぐって対立が深まったり、政府に不信感をもったり、安心してまたもとの生活に戻ろうと思ったり、科学が万能だと思ったり。いろいろだよね。
そういうゴタゴタのなかで、あの声が薄れてきてる。

「これが最後のチャンス」

立ち止まって、わかちあうことを学ぶために、この出来事が起きた。
去年は、確かにそう感じていた。
だけど、いまは、あの声がとても遠くなってきた。
ワクチンという「わかりやすい解決」の前で、すごく、もやもやして頭がすっきりしないんだ。
オリンピックもあったからかな、元に戻ろうという強い力が精神を引き戻してきて、それに抗うのにとても疲れる。
去年のほうが、ずっとクリアだった……。
正気に戻らなくちゃと思う。





by flammableskirt | 2021-08-16 12:07

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