神さま

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今朝、神様が来て言った。
「必要なものはすべて揃えてある。なんでも好きなことを始めなさい」
私は言った。
「でも神様、お金と時間がないんです」
神さまは困ったように言った。
「そのアイデアは人間がつくったものだ。お金も時間も存在しない」
私も困って言った。
「お金がないし、時間もないし……それに私はもう年でこれから新しいことを始めても死ぬまでに達成できるかどうか……」
目が覚めた。神様はいなかった。
そうだよ、あんたはいつも肝心な時にいないし、なにもしてくれないじゃないか。

雨がざあっと降って、止んで、陽が差した。
とかげが石の下から這いだした。
蝉が鳴いて、風が木々が枝を広げた。
鳥が水たまりで羽を洗っている。
海辺の坂道を転げていく子どもらの声。
死んだ黒い蝶を蟻が運んでいる。

なんで私は私で、蟻は蟻なんだろう。
子どもの頃から、ずっと疑問だった。いまもわからない。
なんで、こんなに命がたくさんあるのに、私は私なんだろう?

まだ、手は十分に動くし、目も見える。

とりあえず、お茶をいれて、犬にごはんをあげた。
とにかくなにかを始めてみるか。
思いついたことから。





by flammableskirt | 2020-08-27 22:20

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