「1人パンデミック映画祭り」

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◎なんだこりゃー!「復活の日」を観てぶっとんだ。(ネタバレありなのでご注意ください)

「1人パンデミック映画祭り」を続けています。今日は、日本映画の「復活の日」観てみました。主演は草刈正雄。原作は小松左京。
こ、この映画は映画としてヘン!というか、いやー、めちゃくちゃな映画だった。原作は1964年に書かれたSF。巨匠小松左京の壮大なスケールの物語。小松先生、さすがです。監督は深作欣二。
映画化はTBSと角川春樹事務所の合同制作。外国人俳優をふんだんに使って、ヒロインは当時人気だったオリビア・ハッセー。懐かしい。

この映画のぶっとぶところは、主演の草刈正雄さんがぜんぜんかっこよくない!なんだこのていたらくぶりは!よくもこんなダサい主人公で大作を作ったものだと見終わってひっくり返りそうになりました。(この映画が配給された当時、私は観ていません。予告編はリアルタイムで観ました。もしかして観ているのかもしれないけれど、当時は興味を持てなくて内容を忘れてしまっているのかもしれません。20代の私にとってあんまり魅力的じゃない内容であることは間違いなし。今だから最後まで観れた)

70年〜80年代はまだ米ソの冷戦時代。時代設定は1982年。軍の陰謀で最近兵器が極秘裏に作られる設定は、ダスティン・ホフマン主演の「アウトブレイク」と共通。この時代は軍拡の時代で、CIAも大活躍しており、実際に細菌を使って暗殺なども行われていた記録がボロボロ出てくるので、もしかしたらこの内容は当時のほうがリアリティあったかもしれないです。(たとえばレゲエの神様ボブ・マーリーもCIA職員が贈った細菌シューズを履いてガンを発症した……と、元CIA職員が暗殺を告白しています)

アメリカ軍が極秘裏に作っていた「強力な感染力をもつ細菌兵器」が持ち出されてあっという間に世界に拡散。南極大陸の観測基地の隊員以外、人類死滅、という最悪の状況設定から物語が始まるところが……もう、ダントツに凄い。最悪のシナリオがイントロなのです。
南極に残った11カ国の隊員たちが連合政府を樹立。しかし、米ソの核対立で配置された両国の核兵器のスイッチが作動して、パンデミックで無人になった世界中の都市にさらに核兵器が落とされて世界が二回死ぬ……というおそるべき展開に。
登場する人間はみんな非常に無力。核兵器のスイッチを解除するために国防省に乗り込む主人公は目的達成できず。仲間も無駄死に。

まったくスカっとしない映画。タイトルが「復活の日」なんですが、いったい希望があるの?って感じ。ただただ、人間が無力でアホなだけ……って思えてくる映画なんです。
細菌兵器で、わずかな人間を残して人類ほぼ死滅、そこに、核ミサイルがんがん打ち込まれて都市が破壊され、地上が放射能汚染される設定ってマジ凄くないでしょうか。こんな映画だったのか〜と、見終わって茫然自失でした。

人類の危機がてんこ盛りの映画。角川春樹さんは何を思ってこの映画を制作したんでしょう。主人公の男は恋人に子どもが出来ても気づかずに別れて南極に来てしまう鈍感な奴なんです。そして、核兵器発射も止められない。痩せっぽちで頼りない人なのですが、放射能汚染された荒れたアメリカ大陸を徒歩で縦断して南米にたどりつく(マジか?)!そして北極から南下してきた生き残りの人々と奇跡的に再会する……。いったいこれが希望なのかなんなのかよくわからないです。ただただ、ボロボロの服を着た主人公が異様です。

……と、こう書いているとケチをつけているみたいなのですが、とにかくですね、細菌兵器と核兵器で世界が二度死ぬ……という設定はびっくりでした。人間の愚かさもここに極まれり!ハリウッド映画では絶対にありえない設定だと思うんですよ。ホワイトハウスがただただ無力。大統領も為す術ナシ。みんな死んじゃう。ある意味、こんなにカッコ悪いアメリカを描いたのが凄い。人々が死に絶えた都市に炸裂して立ち上る原爆雲が映されて、まったく人間って奴は何をやってんだろう?という気持ちになります。

当然のことながら海外では不評で配給的には赤字だったと聞いています。そうだろうと思います。でも、なんかこう「これが人間ってもんだよな」という気がしないでもなく、いま観ると「よくぞこの映画をつくった、さすが角川春樹さん」と、こっそり拍手をしたい気になってしまう。映画のかなりの部分が英語……というのもけっこうムリがあって、観ていて恥ずかしいようなシーンもあるんですが……。それでも、この映画、嫌いじゃないかもしれません。
だって、こんな映画、ふつうの人は作らないよ〜。
核兵器後で破壊された後の世界を描いた名作「渚にて」に似たシーンがあります。生き残った人々が潜水艦から汚染された陸を観る……。

「渚にて」では忍び寄る放射能汚染の中で生きるオーストラリアの人々の日常が描かれていました。配布された安楽死の薬を受け取り死を覚悟する人間の姿が。
「復活の日」は、細菌兵器に全滅させられ、その上に核兵器で破壊された世界で放射能を浴びつつ人々が希望を持って生きてくことを暗示しようとした映画です(成功しているかどうかは不明)。
やっぱり、原爆を落とされて復活した国は強いかも……と思いました。





by flammableskirt | 2020-04-23 16:50

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