田代まさしさんと薬物依存症

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田代まさしさんの逮捕のニュースを観ました。

一度しかお会いしたことがありませんが、個人的に感じていることを書いてみます。

(かつてアルコール依存症の父の家族だった者として)


田代まさしさんとは、東京のポレポレ東中野で行われた

「依存症は病気です!」というイベントで共演した。

呼びかけ人はアルコール依存症者として「壊れ者の祭典」を主宰する月野光司さんで、
依存症のことをもっと世間に知ってもらおうという趣旨のイベントだった。
私は依存症の家族をもつ者、という立場で出演した。
打ち合わせの時から本番まで、田代さんは実に場の空気を読み(読もうとし)、

観客を喜ばせようと一生懸命だった。
依存症の影響で呂律がよくまわらないのだが、それもネタにしてお客さんを笑わせた。

まるで、お客さんが笑ってくれることで自分がそこに存在している意味がある、……みたいな真剣さだった。
ものすごくまじめな人なんだなあと思った。
だから、ネタが思いつかなくて不安になって薬物に手を出したというのは、本当なんだろう。
それくらい、ネタを連発することに必死だった。

田代さんのネタは、ほとんどが薬物に関することで、
自分の依存症をネタにして、自虐的にお客さんを笑わせていた
このイベントでそんなにネタを連発しなくてもいいのに
お笑い番組じゃないのに、田代さんは必死にネタをかまし続けた、

私は依存症の父に迷惑をかけられてきた家族当事者なので
かなり辛辣なことも言った
とにかく、依存症の家族に巻き込まれないで自分の人生を生きることだ、

巻き込まれたらいかん、距離を持つのも大事だ!

田代さんはそういう私を「冷たい」と言った。
家族と暮らしたい……と。

そうなんだ、依存症というのはものすごく淋しい人の病気だ。
なぜかもう淋しくて淋しくてどうしようもない人の病気だ。
そんなふうに言っていたのは浦川ベてるの家の川村敏明先生だった。

(川村先生は依存症に詳しい精神科医)

http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2541dir/n2541_07.htm

淋しいんだなあ、そこはかとなく淋しいんだなあと思った。
田代さんの淋しさは、隣にいてもしんしんと肌に伝わってきた
その切羽詰まった感じも……。
こういう淋しい人を繰り返し刑務所に入れたところで、
なんの解決にもならないなあと思う
覚せい剤で逮捕された人の再犯率の高さを見れば、
刑務所という場所がほとんど抑止になっていないどころか
売人との新しい接点になっているのがわかるのに

犯罪者への厳罰主義はとても根強い

依存症は脳の病気だから
更生というよりも、むしろ適切な治療が必要なのだけれど
ほとんど「個人の精神の弱さ」「だらしなさ」のせいにされ
まじめで仕事しか生き甲斐のないような人を
どんどん追いつめていくことになってしまう
依存症という病気についてもっと知ってもらいたいと
そういうイベントだったけれど
「依存」ということば自体に、
そこはかとなく精神的弱さが漂うせいか
病名がこの病気の理解を遅らせているように思う

(中毒……のほうがニュアンスとして近いかも)

テレビで報じられているような
自堕落で、不真面目な人ではなかった

むしろ、懸命に自虐的に病気のことを伝えようとしていた。

覚せい剤は売人の問題があまりニュースに出ないが、

売人という人たちは、とても執念深く、目をつけられたら恐ろしいと聞く。

できればそういう闇の部分をもっと報道してほしい

簡単に手に入るものではない

売る人がいるのだ

依存症の家族は、自分の家族の本当の顔を知っている
悪い人じゃないことはわかってる
だから、なんでそんなに荒れていて淋しいのか、辛いのか、
わかってあげられない

なにをどうしたら、いいのか、家族もわからない……。

他者の助けが必要だ。複数の、多くの、他者のネットワークが必要だ。

依存症の人は宗教的な課題を抱えている……
と河合隼雄先生に聞いた
……そう言ったら
田代さんは「そなんだよ……」と驚いていた。
神様っていると思うんだよ……と。

神様しか救えない孤独というのが
あるんだな、きっと。
神様が田代さんの側にいてくれますように。


依存症は病気です!

https://youtu.be/Ks5X9kWmFyg






by flammableskirt | 2019-11-08 12:39

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