町おこしイベントの始まりだ
2019年 03月 06日
◎私になにができますか?
第一回目の「みんなで知恵を持ちよるブックフェア・ポトラ」が終わったあと、全国の本屋さんを取材している編集者で文筆家の南陀楼綾繁さんに取材を申し込んだ。新宿の喫茶店でお話しを伺った。
「湯河原の本屋さんを応援するために私にできることは?」と聞いたら「一度、湯河原に行ってみたい。見てみないとわからないから」
さすが、南陀楼さん!頼もしいなあと。
そして、南陀楼さんに湯河原の書店「好文の木」に来ていただき、湯河原一箱古本市の企画が立ち上がった。
ポトラで「町の本屋さんを応援しよう」という企画を南陀楼さんと共同で立ち上げ、古本市の結果報告をポトラですることになった。古本市からポトラ開催までは1週間。ほんとうにリアルタイムレポだ。
◎実験が始まった
桜新町という会場から飛び出して、実験的な企画をしてみたかった。人と人がつながって、輪が広がっていく様子を見せたかった。
「あなたの町でも、こんなことができるよ!」って伝えたかった。
夢が実現する場のポトラに……、だから自分でやってみた。
南陀楼さんのマーケティング力はすごく、町を歩いていろんな情報を発掘してくれた。市場が開催されるならその日に合せて、人間が動く動線まで予測して、アドバイスをくれた。さすがだ。
小田原ブックマーケットの実行委員長の牛山惠子さんが、一箱古本市のノウハウを伝授してくれた。ガーランドの作り方、マニュアルの作り方、さまざまな細かい手順、レイアウトを教えてくれた。さすがだ!牛山さんなくして、一箱古本市の開催は難しかった。見えざる神の手を感じた。
「親子で一箱古本市」が湯河原のテーマとなった。地元の幼稚園で長年一緒に発達障害の会をしている井上美千代先生がこの企画に参加してくれたおかげで、幼稚園の椅子や機材を借り園バスで運んでもらえた。子どもたちへの参加も呼びかけてくれた。ガーランドをつくる場所も提供してくれた。
幼稚園には文房具はなんでもそろっている。設営のためにガーランドづくりには最高の場所だった。しかも、園児のお父さんがプロの映像作家で、なんと!動画制作を引き受けてくれた。すごい。
◎ヴォルテックスが生まれた
小田原から助っ人がやってきた。だんだん人の輪ができてきた。町の商店も参加してくれることに。林純子店長が、忙しい仕事の合間に徹夜でポスターを作ったり、参加者とのメールのやりとりをしたりした。すごくがんばった。ほんとうに林さんは大変だったと思う。でも絶対に泣き言を言わない。いつも笑顔。元気。林さんの人柄にみんなが集まってきた。
一箱古本市を本屋さんの前で開催したら、新刊本は売れないじゃないか、と懸念する人もいた。私も最初は不安だった。でも南陀楼さんは「そんなことはないですよ」と言った。経験者が言うなら信じよう。
私は人はなにを求めているか、もう一度考えてみた。本ならポチっとAmazonで買える時代。でも、人は商品ではなくて「楽しさ」を求めているんじゃないか。本屋さんで本と出会うわくわくを求めているんじゃないか。人とのつながりを求めているんじゃないか。
どこで、どんな雰囲気で、それを購入したか、のほうが大切なんじゃないか。だから、楽しくて価値のある場をつくれば、本もおまけとして売れるんじゃないか。「本屋さん・好文の木」に価値があれば、人はどんなに遠くからでも来てくれるはず。
◎価値は愛!
ここの価値はなんだ? それは、林純子店長であり、私であり、美千代先生であり、牛山惠子さんであり、関わっているすべての人によって作られている「友愛」の雰囲気と、新しいことへの「好奇心」、チャレンジ精神がつくりだしている見えないエネルギーなんじゃないか?
雨天の時の会場は、近所の看板屋さん「アート高橋」さんが快く貸してくれることに。すべてはうまく回っていた。なにも不安がなかった。不安がないから天気も快晴だった(笑)
けっこう高齢のおばさんチームが、できることを持ちよって、脱線しながら、あたふたしながら、それでも不思議と辻褄があって、テンパっていたり、勘違いしていたり、ど忘れしていたりをしながらも、集まると飲んだり、食べたり持ち寄りパーティをして、大成功だった湯河原一箱古本市。
3月3日のポトラには、南陀楼綾繁さん、林店長、牛山さんが登壇。参加者に成功秘話を語った。林さんの娘さん2人も遠くから来てくれた。牛山さんのご両親も、湯河原の仲間も、美千代先生も。そして、なんと湯河原一箱古本市に出展した方や、お客さまとして来てくださった方の顔も、みんなが嬉しそう。
どうしてみんな、知っていることを聞きに遠くから集まってくれたの? そこに友愛があるからだ。あの雰囲気をみんなが好きになってくれたからだと思う。価値あるところに人は来る。来たくなっちゃう。私だってそうだもの。
その価値は誰かが一人で理念で立てるようなものではなく、相手を思いやったり、助けたり、いっしょに楽しみたいとつながったりするなかで、自然と立ち上がって来るものだ。あざとさはなく、もっとシンプルで、人間が生きるために必要だった、あの懐かしい感じだ。
その場に入ると、それぞれの能力がバージョンアップするような、そんな渦ができれば、あとは流れにまかせていれば、人はどんどん自分で自分を喜ばせることができる。喜び製造マシーンに、一人ひとりがなっていく、そういう場が、できた。そして、消えた。
竜巻は消える。そしてまた、現れる。それがいいね。
※南陀楼綾繁さん、ほんとうにありがとうございました。一箱古本市はすばらしいイベントです。こんなすてきなイベントをつくってくれたことに感謝。全国で開催できます。地域の輪が広がります。そして、何度も湯河原に足を運んでくださり、貴重なアドバイス、応援、ラジオでの告知宣伝、お世話になりました。私も、どこかの誰かがこのイベントを開催するときは、同じように協力します(無理せず、できる範囲で)。