これはもはや人形ではない。存在として人形じゃない。わたしの知っている人形じゃない。たしかに人の形をしているけれど、精霊?
四谷シモンさんの個展会場で、人形の写真ばかり撮っていたら「シモンを撮らなくていいの?」と言われ、あ、でも人間にカメラを向けるのが苦手なのでもじもじしていたら「おじさんは撮らないってさ」ってからかわれてしまった。そんなことありません。シモンさん、とってもすてきな人。人形とシモンさんは似ている。シモンさんも精霊さんみたいだ。
でも、わたしは人間を写真に撮るのが苦手。花とか石とか水しか撮らない。人間にカメラを向けてはいけない気がして、向けられない。人形は平気だった。花を撮るような気持ちで、たくさん人形を撮ってしまった。この人形を撮りたくなる写真家の気持ち、わかるなあ。
撮るたびに違う表情になる。人形じゃないよ、だってこちらを意識しているもの。でもその意識は人間のものじゃない、やっぱり、花とか石に近いものだった。精霊をつくる人がいるんだなあ。近寄ると花の香りの息が匂ってきそうでした。
シモンさんも精霊みたい。銀座青木画廊にて