なぜ日本は原子力を受け入れたのか

日本エネルギー会議というイベントに出席した。どちらかといえば原発運用に肯定的な経産省出身の方とお話する機会を得て、改めて官僚、あるいは官僚を経験した人たちが、いかにこちらの質問を自分の都合のよいようにすりかえて答えるのが得意なのかを痛感した……。とはいえ、それを悪気があってなさっているともあまり思えず、どちらかといえば環境の中で適応した能力、そのような習い性になっていると感じた。人間は生きるために環境に適応するものだから、環境そのものが変わらなければ、よほどの独自性をもってしてもいつしか適応していくものなのだと思う。それは自戒もこめて……。では経産省という環境はどうしたら変えられるのか。私にはわからない。とりあえず、もうすぐ8月であるし、若い方には私の本を読んでほしいと思う。この本は原爆を落とされ核アレルギーだった日本が、戦後なぜ、どのような経緯で原発を導入したかが、中学生にわかるように書いてある。ただ、戦後の通産省が帝国陸軍の流れをくむ非常にトップダウン的でしかも過激なまでに国益優先の組織だったことは、本書では触れられなかった。いろいろと書き足りないことはあるけれど、歴史を知ることは物事の理解にとても役立つと思っている。核兵器製造までの科学史や、資本主義、社会主義が生まれるまでの経済史にもわかりやすく触れている。ここに書かれてあるのは基本的なことだが、案外と知られていないことだ。だから、あまり得意ではない新書を書いて。いままで誰もわかりやすく歴史的な経緯を書いてくれていなかったからだ。自分が知りたかったことだから勉強し、そして、誰にでもわかるように書いた。中学生、高校生にはとくに、読んでほしいと願っている。

ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ: 原子力を受け入れた日本 (ちくまプリマー新書)

田口 ランディ / 筑摩書房


by flammableskirt | 2012-07-30 13:45

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