遺伝子治療が怖い理由

「いのちのかなしみ 私のカラダの情報は誰のものか」著・河原ノリエ/春秋社 という本を読んでいます。作者の河原ノリエさんは、ゲノム情報の解析に興味をもち、遺伝子治療が多くの人間の個人情報の上に成り立つことに疑問を持ちます。子育てをする一人に主婦が「遺伝子治療」という最先端科学に立ち向かいながら一人のノンフィクションライターとして育っていく過程が面白い。同時に、「個人情報」とは何か?なぜ遺伝子治療が個人情報と深く関わるのか、わかりやすく優れた科学評論でもあります。さらに、彼女の父親との関係……彼女は子どもの時に顔に大やけどを負っています。子ども時代に風貌により偏見を受けて育ち、それゆえ「血筋」による偏見に深い共感をもつことができた女性が、遺伝子治療に挑んでいく……。女性しか書けない本……と思うのは、テーマが幾重にも幾重にも重複し重なりあいながらも包括的に進んでいくことです。それゆえ、科学ノンフィクションであり、自伝であり、文明論であり、哲学書でもある……ジャンルに収まらない本になっています。だから、すばらしいと思う。いろんな読み方ができる。いろんな考え方がわいてきます。科学に興味をもっている女性の方には特におすすめです。

いのちのかなしみ: 私のからだの情報は誰のものか

河原 ノリエ / 春秋社


by flammableskirt | 2012-06-29 13:59

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