舞い降りた「祈り像」
2012年 06月 25日
田中さんが仏像を創り始めたのは、とある事情から心身ともに傷つき、人生のどん底の状態にいた時だったという。ふと、粘土でなにかを創りたいという衝動を感じ、気がつくと仏像が手のなかに現れていた。それは創ったというよりも、仏像が降りてきたと言ったほうがいいかもしれない。以来、田中さんは仏像を創り続けている。最初はブッダだった。苦行に苦しむようなブッタ像。創り続けているうちにさまざまな仏像たちが現われる。慈悲深いもの、修羅と菩薩の二つの顔をもつもの……。すべて粘土で創られている。彼の作品を知る人はまだほとんどいない。まったく無名の人と言ってよいだろう。でも、この仏像にはなにかを感じる。だから、とりあえず見てください。ようやくホームページを立ち上げたという連絡を受けとったので、ここにご紹介します。あなたはこの仏像たちをどう思いますか? 苦しみ悶える一人の人間に突然にやってきた仏像たち。そういうことは、あるのだと思う。私自身が、兄の無残な死を経験して「書きたい」という衝動を得たように、どん底にいる時に現れる、祈りにも似た表現衝動……。自分ではない者が存在するように、なにかを創りだす瞬間。
まずは、彼の「祈り像」を見て、感じてください。
祈り像