年よりくさい結論
2012年 06月 25日
私も、二十代、三十代の人たちを見ると「若いなあ」と思うようになっている。でもこの「若いなあ」という感じはどういう心情なのかあまり考えたことがなかった。若干、うらやましいような気持ちもある。かつて自分がその年代だったことを思い、ああ、ちょうどあんな頃の自分と同じなんだなと思う。あの時から今までの時間を思う。相手が一まわり年下だったら、現在の私になるまでに十二年の時間がある。ああそうだ、時間なのだ。
「若いわねえ」と私が発するとき、その十二年の時間についてなにかを感じているのだ。その時間がまだ相手に与えられていることへの羨望だろうか……。いや、それだけじゃないなあ。なんだろう。
若いほうがいいと思っているわけではない……と言いたいところだが、現実には心のどこかで「若くありたい」と思っており、そういう自分のせこい若さ願望に、自分で呆れていたりする。アンチエイジング……という言葉にあざとさを感じるくせに、五歳若返るという保湿クリームを顔に塗ってしまう矛盾した自分がいる。
「若いわねえ」というため息は、若さを諦めきれない自分のせつなさなんだろうか……。
若い男子はたいへん残酷なので、かなり情け容赦なく年配の女性を「おばさん」と言って切り捨てる。「あの田口ランディっておばさんなんだよ」と言われて、不快に感じるというよりも、通りすがりの自動車に泥をはねられた感じがする。相手は無自覚だろうけれど、そこにこめられている柔い侮蔑に傷つくからか。そして、そんなものに傷つくナイーブな自分を逆に責めたりする。
もちろん面と向ってそんなことを言う人はいないが、後でこっそり tweetしていたりするのを知ってショックを受けることがある。ああ、あんなに感じのいい子がこんなことを呟いているんだな……と。それは男子でも女子でも同じ。おかげで他者への配慮を学ぶ。どちらかといえば年をとるほど学ぶことが多くなった。たぶん、年をとればとるほど年下から叩かれるからだろう。若いうちは怖いもの知らずだったし、若いというだけで許されていたことがたくさんあったんだな、といまになって思う。目上を叩いていればよかった。ずいぶん「あのおじさん」とか「あのおばさん」と言って、目上のことを批判したり冷笑したりした。尊敬しながら笑っていたり……。因果はめぐるということだな。うわあ、すばらしく年よりくさい結論だ。ハラショー。