生きるってことは、相当にシンプルだ

4月10日、11日といろんな方とお会いすることができました。
お子さんを連れて来てくれたお母さんが多かったことがとてもうれしかった。
子どもは存在しているというだけで祈りだ。完璧な存在だと思う。
大人になるにしたがって不完全になる、そんな気がしてしまう。
不完全な自分に気がついて、もういちど完全さを目指すのが成長というのかもしれない。

緊急時のときは、男の人と女の人の違いのようなものが、とてもくっきり現われるなあと思う。
私は自分が女なので、男の人のことは不可解でよくわからない。
よくわからないので興味があり、だから私の書く小説の主人公は男性が多い。

昨日、友人と話していて、男はロマンに弱いということを聞いた。
友人は男性である。男はロマンが好きで、女はロマンスが好き、なるほどそうかもしれない。
男のロマンとは、使命感と強く結びついているそうだ。
なにかを守らなければ、助けなければ……という思いが強いという。

私にも、子どもを守らなければという思いはある。
子どもは自分の最大の強みでもあり弱点でもある。子どものこととなると感情的になってしまう。
だが、使命感というものは自分にはないなあ……と思う。
だから、もうオバさんになった今、男のロマンには着いて行けない時がある。
男のロマンに着いて行けない私には、そのロマンを共有することで起こるロマンスもないのである。

現実的だなと思う。けっきょくのところ私は、ここがどこであろうと、明日がどうであろうと、
子どもの汚れた服を洗い、干して、着替えさせるだろうし、家族のごはんの心配をする。これはもう間違いない。
生活という小さな秩序は、政権が変ろうと、国が変ろうと、大差はない。
社会主義でも、資本主義でも、人間のやることは大差ない。
食べて、寝て、排せつして……を繰り返すだけだ。
金持ちだろうと、貧乏人だろうと、この繰り返しだ。
この繰り返しの合間をどう生きるかを、人は人生と呼んでいる。
その合間を何で埋めるかを生き甲斐と呼んだりもする。
その合間に消費することを贅沢と言うらしい。
その合間にsexして子どもを生んで、育てる。
その合間に、掃除や洗濯をしながら食べるための手段を探す。
ロマンもロマンスも、すべてこの合間に行われる。
食べて、寝て、うんこする。
この宿業に人間は逆らうことができないし、それを繰り返していくうちに老いて死ぬ。
その合間に、戦争したり、宇宙に行ったりするんだから、
人間というのは、おもしろい生物だなあと思う。

人それぞれなので、なにをもって人生の質を決めるかは違う。
私の場合は、体調と精神状態がすべてだと思っている。
一日の始まりが気持ちよく、身体がすっきりしていて、気持ちも落ち着いていれば質が高い。
そうすれば何を食べてもおいしいし、誰と会っても有意義だし、なにをしても楽しいものだ。
二日酔いの時は集中力がなくて辛いし、体調や気分が悪いと、贅沢しいててもめんどくさいし、他人を思いやる気持ちが失せるし、なんだか荒んだ自分になる。
そういうのは、もう自分がしんどくて嫌なのだ。
さっぱりしていたいのである。すかっとしていたいのである。
私にとって、クオリティ・オブ・ライフとはそういうことだ。

さっぱりしていると、掃除したくなるし、洗濯したくなるし、仕事もしたくなるし、人に会っても笑っていられるし、一日を精いっぱい生きられるし、そうするとよく眠れる。
そんなこと、まったく馬鹿馬鹿しいことだ、あまりに正論すぎる……と、若いころは思っていたが、けっきょく自分のやれることなんてたかがしれており、ましてや、ボケた頭でできることはもっとたかがしれており、ここぞという時にすぐ行動するためには、気持ちと身体がふわっと軽くなきゃ、ささっと立ち上がれないんだな、みたいなことが、経験としてわかった。
経験であるから、疑いようもない。
だが、こんなこと自分がバカにしていたんだから、いくら若い人に言ったところで、やっぱり伝わらないだろうな、ということもよくわかる。

生きるってことは、かなりシンプルなことなんだ。うん。


by flammableskirt | 2011-04-13 11:16

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