年末の雑感
2009年 12月 31日
2009年もあとわずかで終わろうとしています。
今年はみなさんにとってどんな年でしたか?
私の2009年はとても穏やかなよい一年でした。大きな変化はなかったけれど、家族と優しい気持ちで生活できたし、イタリアの友人達との交流や、新しく出逢った方々にたくさん励まされ、勇気をもらい、人とのつながりをとりわけしみじみと感じる一年でした。 アカペラのコーラスグループに参加したり、地元で発達障害の会を立ち上げたりと、自分の生活している場とのつながりが強くなった年でもありました。これまでずっと都会を向いて仕事してきたけれど、今年は初めて自分の住んでいる場所に目を向けた気がします。
地元での初めての講演会や、サイン会、それを通じて地元の方たちとの新しい関係も生まれ、なにかようやく自分の足裏が地面にくっついた気がしました。
短編集、エッセイなど、本もたくさん出版しましたし、お話もたくさんしました。いろんな場所に呼んでいただき、テレビにも出演しました。それでも、仕事として新しいことはなにもしなかったな、というのが本音です。
地道に現状維持をして足元を固めた一年、そんな年でした。体調もまずまず良好で、朝の目覚めも良かったし、食べ物もおいしくいただきました。つつがなく……という表現がぴったりの、落ち着いた一年でした。だから、一年の終りがとても静かで、ほっとしていて、気持ちよいです。
今年、お世話になったみなさん、ほんとうにありがとうございました。北は北海道から南は沖縄まで、いろんな場所に行きました。どこに行っても暖かく迎えていただきました。みなさんにほんとうに真剣に話を聞いていただきました。その一つ一つの出来事がふるふると春の陽ざしのように降り注ぎ、エネルギーとなってこの年の終りに私はこんなに元気でいられるのだなと思います。
2010年は小説家としてデビューして10周年にあたります。
10年は短いような、長いような……。不思議な感じです。
執筆中の長編小説は、まだ、出口がよく見えません。年末年始は最も集中できる時期なので、ずっと仕事をします。休みたいとも思わないです。毎日、同じペースで規則正しく生活する、そのリズムのなかに執筆も組み込まれてきているので、かえって何もしない日は調子が狂います。ただ、黙々と日々を過ごしているほうが、自分の時間も大切にできるように思います。
若い頃、あんなに不規則が大好きでぐうたらだった自分が信じられません。人間というのはほんとうに年とともに変化するものなんだなあ……と思います。たかだか20年前は、夜中まで仕事をして、真夜中に酒を飲んで焼き肉を食べて朝まで遊んでいたのに、どうしてあんなことができたのか、あれが自分だったと思えないほどなのです。人間は年とともに老化しますが、それはあんがいとありがたいことでもあると思います。いつまでも、若い頃の体力があったら、燃え尽きてしまっていたかもしれない……。
もう夜更かしする体力もないので、ちょうどいいあんばいで生きられるようになってきました。
生きてみないと、その年になってみないとわからないことってあるんだなあ……ってよく思います。
私のなかには10代の時の自分も、20代の時の自分も、30代の時の自分も全部存在していて、それを好きなように組み合わせて生きているようなところがあります。見た目はおばさんだけど、中味はいろいろなんです。
それはほんとうに生きやすく、楽なことで、10代、20代、30代の生きにくさを思うと、ああ、いまは心から楽だと思えます。死ぬほど生きにくかったあの頃、なにをやっても満たされなかったあの頃、どうしても自分にしっくりこなかったあの頃……。あれは「絶対唯一の自分になろう」としていたからなのかもしれない。
いまは、どの時代のどんなダメな自分であってもそれなりに「いいじゃん」と思えるから、楽なのかもしれない。
来年はどんな発見や出逢いがあるかな。
みなさんもどうかよいお年をお迎えください。