羽根ペン

イタリアでは「コンセント」「アンテナ」「モザイク」の三冊が翻訳出版されている。
私の三部作がすべて翻訳されているのは、イタリアだけだ。
なぜかといえば、熱烈に作品を好きになってくれた編集者と翻訳者が存在したからである。
熱心な編集者がいければ、たとえベストセラーになったとしても海外では出版できない。

最近、日本でも出版社の契機が悪いせいか翻訳文学の出版も減っている。
しかし、それ以上に日本の文学が世界に紹介される機会は少ない。それは、日本人の作家がまずあまり翻訳に熱心でないことと、日本の出版社が日本文化を海外に出すことに熱心でないからだ。
海外の市場は日本ほど大きくないし、「ダ・ヴィンチコード」くらい売れれば別だが、海外出版で儲かるということはあまりない。それでも、海外で翻訳されれば海外の読者を得ることになる。
イタリアに行って、一番うれしいのは、全く文化の違う国の人たちと本を通じていろんな会話ができることだ。

本が翻訳されていること、また「アンテナ」という小説が映画化されてヴェネチア映画祭にノミネートされたことなどあって、イタリアに行く機会が増えた。この三年間、毎年イタリアのどこかの街の文化祭や文学祭などに招待されて、その度に会うタリアの日本文学を教えている人たち、編集者、ジャーナリストとはすっかり仲良くなった。私の家にも度々、イタリアから友人たちが尋ねて来るようになり、いまや私にとってイタリアは一番身近な海外となった。

彼らといっしょに過ごす時に感じる、親しみ、安心感というものは得難い。どうしてこんなに心安らぐのだろうか……と不思議に思う。そう言ったら、私の本の翻訳者であるジャンルーカは「それはきっと、田口さんがちょっとイタリア人に近くて、私たちがちょっと日本人に近いからだと思います」と笑った。

羽根ペンとインクと紙を買った。そして、ペンの神様にお願いした。いい小説が書けますように。


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by flammableskirt | 2009-11-04 15:00

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