全身全霊主義

この夏、私はなぜこんなに忙しいのかわからないが夏中ずっと毎日いろんなことがある。不思議なくらい。寝る間もない。別に人気があるわけでも、本が売れてるわけでも、なんでもないのに、もちろんお金が入るわけでもないし……。それなのにあたふたしているのはなぜか。たぶん、いちいち全力投球するからだ。もっと気を抜いてやればいいのに、なにかやるときは全身全霊でやってしまうからだ。これは長い年月をかけて身に付けた私の生活信条であるので、もう個性の一部になってしまって抜けられないのだ。誰かと会うときも、食べるときも、踊るときも、本を読むときも、ビデオ観るときも、懸命であり全身全霊であるので、疲れるのだ。年をとったからだと思う。いちいち完全燃焼していたら身がもたんだろうに、やっちゃうんだ。そのときにやれる限りのことをしてしまうので、
常に余裕がなくてあたふたしているのである。ゆうべも全身全霊で踊ってしまった。いいのかおい、もう５０になろうってのに……。

でも、世の中には私と似たような人もいらして、たまたまディスコ会場で黒岩先生のお友達という方に会ったので、黒岩先生に電話してみよ〜よ、と盛り上がって電話してしまった。そして「これから生バンドでがんがん踊るんですよ、先生もおいでよ〜！」と誘ったら、先生は仕事に飽きたとこだったらしく、麻布からポルシェを飛ばして湯河原まで来てくれたのだった。会場に現われた時はびっくりしたけど、最高潮にノリノリのところに遅れてやって来て、ちゃんと変性意識状態にチューニングできてしまう先生はやっぱりただ者ではないなあ……と思った。自己コントロールできるんだよ。ハイの状態へ自律的に移行できてしまう。でも、そうでなければ催眠療法なんてできないよなあ。それから強引に私の家までお連れして、強引にスイカを食べさせてしまい、夜２時に先生は車で帰って行った。いいなあ、先生も全力で生きているなあと清々しい。ほんとうに自分のやりたいことだけやって生きてる人って感じです。

今日から東京に行くので、また二日間、怒濤のごとく人と会う。さて、今夜はなにが起るかな。楽しみだ。生きている間は全身全霊でいきます。しょせん死ぬまでの暇つぶし。生きてるときしか生きられないし。