エドワード・カーティスと「風の旅人」

「風の旅人」第37号、今回のテーマは、永遠の現在⑦「時と悠」です。

以下、「風の旅人」編集長の佐伯剛さんのブログより転載。

巻頭には、100年前、エドワード・カーティスが撮ったアメリカ先住民の荘厳なまでの写真が23頁にわたって紹介されます。カーティスは、30年間にわたりアメリカ先住民とともに暮らし、親交を深め、通りすがりの人間の目には入らず、おそらく先住民自身も気付いていない生活の細部や彼らの表情のなかに煌めく美を掬い取りました。100年前すなわち欧米人がアメリカ大陸に進出して300年の間、横暴の限りを尽くしてきた時点においても、先住民の顔は気高く、尊厳に満ち溢れています。
私たち近代人は、自己のために世界があるかのように錯覚していますから、その世界が自分に都合良くいかなくなると、苛立ち、ストレスを感じ、「顔」を歪めていきます。それに比べて、最初から世界が自分のためにあるなどと思っていない古のアメリカ先住民は、どんなに苛酷な試練のなかにあっても真っ直ぐな眼差しを持ち、気高く穏やかな表情を湛えており、カーティスは、見事にそうした人間の「顔」をとらえているのです。   
そのカーティスのことを深く尊敬しているというデビー・フレミング・キャフェリーの写真が次に続きます。彼女は、アメリカ合衆国の南部、ルイジアナ州に生まれ育った白人女性ですが、自分の農園で働く黒人達を、長期間にわたって丁寧に撮り続けています。
カーティスが撮ったアメリカ先住民のように、キャフェリーが撮った黒人たちもまた厳かな美を放っています。

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エドワード・カーティスの写真は本当に凄い。お金のない人は立ち読みだけでもいいから、この写真に触れてみてください。どう言ったらいいんだろう。なんかもうほんとうに、すごいとしか言いようがない。それくらいすごい。作家のくせにこんな陳腐な言い方しかできなくてすみません。

エドワード・カーティスの写真の人々に、私は会ったことがあるような気がする。あるいは私はこの人たちとこれから会うのではないかとも思える。この写真は過去じゃない。この写真は私の未来であり、私はこんな顔になるために生まれてきたんだと思える。この顔が私の未来である。そうであるべきだ。このような眼差しをもつためにいま生きている。私のなかには彼らが混じっている。そうであってほしい。そう思える。

不思議な写真です。
http://www.kazetabi.com/bn/new.html
ここでちょっとだけ見れるけれど、でも、できれば生で見てほしいなあ。もっといい写真もいっぱい掲載されているし。そして、エドワード・カーティスにインスパイアされて私が文章を書いています。
by flammableskirt | 2009-05-27 12:08

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