元気が出ること

担当編集の丹羽さんが「よしもとばななさんが、日記で『蝿男』の感想を書いてくれていますよ。すばらしい感想ですよ」と教えてくれた。出張がちであまりネットにアクセスしていなかったので、すぐに飛んで行った。それはもう、なんというか……、泣けてくるようなすごい感想だったのだが、あまりこんなことを大げさに書いてもばななさんは迷惑かもしれない。
『蝿男』という短編集は、私にとってはエポックな作品で、真面目になりすぎるところをどうやって開き直るか、というような試行錯誤から生まれた。それが成功しているのかどうかはさっぱりわからない。読者が決めることなのだが、読者の感想というのを聞く機会もほとんどなく、それが作家という仕事なのだろうけれど、ただ悶々としながら作品を書き続けている。なにかこう、そこはかとなく不安で、結局こんなものを書いても誰も喜びはしないし、なにも感じてなんかくれないのじゃないか……という、妙な虚無感と抱き合わせで生きている。でも、その虚無よりも好奇心が勝るから、こうして作家を続けていられるんだなあと思う。あるとき虚無が勝ったら、もう書けないだろうな、と思う。
小説を読んで、感想を言ってもらえるのはありがたい。
ほんとうに暖かい声援で、彼女の器のデカさをあらためて思い知る。
3月10日の日記です。
ほとんどどんな書評からも相手にされていないこの作品に、目を向けてくれたことに感謝。
どこかにいるかもしれない、この本を必要とする人に、届きますように。



by flammableskirt | 2009-04-25 10:29

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