パピヨン発売

朝から大掃除の準備をする。
いよいよ年末モードである。廃品回収業のK商店さんに見積もりに来てもらう。
とにかく捨てるものが多い。二五年も家庭生活をしていると、ゴミがたまるんだよ。
人が死んだり、子どもが生まれたり、そのたびに物を買い替える。
まだ我が家には代々……という歴史のこもった物は存在しない。
戦争が私たちの世代間ギャップを作った。親世代と私では共有できるセンスが少なすぎる。
だけど、娘と私の間には戦争がなく、私の文化を娘も共有しているゆえ、
私から娘に贈るものはけっこうある。私の物が娘の物になりえる。
だからお友達親子世代などと呼ばれてしまうのだろうけど、私と娘はサザエさんもピンクレディもユーミンも共有しているのだからしょうがない。文化に断絶がなく繋がっている。
それがかえって不気味、ということもできるが……。
私の子どもの頃には、大人の文化と子どもの文化ははっきり棲み分けられていた。
いまはそれが入れ子状態になっていて、よくわからないかもしれない。

昨日から「パピヨン」が書店に並んだ。
……というメールを担当者の陸田さんから受けとった。
そうか、書店に並んだのか。ますます本屋に行くのが恐ろしい。置いていないと落ち込むし。
子どもの頃は本屋が大好きだったのに、いまは苦手な場所だ。
まず自分の本を探してしまう。その根性がさもしい気がしてますます落ち込む。
「パピヨン」はエリザベス・キューブラー・ロスが見つけた蝶の絵を、
ポーランドの捕虜収容所まで探しに行くところから始まる。
しかし、蝶の絵はなかった。見つからない。
がっくりして戻って来ると、父親が大けがをして入院しており、さらに末期がんが発覚。
看取りの先駆者を取材しているうちに、自分が看取るはめになる。
エリザベス・キューブラー・ロスに操られているように、さまざまなシンクロが起こり、
それをリアルタイムで書いたという妙な本である。
一貫して、蝶が現われる。最初から最後まで。
いわば蝶の謎探しだ。
自分の親との関係が、どうもうまくいっていない。
親のことが嫌い。
親のめんどうをみたくない。
年とった親と疎遠になっている。
あんな親、看取りたくない。
そういう人には特に読んでもらいたいな、と思う。
by flammableskirt | 2008-12-19 10:05

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