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川内村自由大学とダイアローグ研究会
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今年8月30日〜9月1日の二泊三日、福島県川内村の高田島地区において「第一回川内村自由大学」を開催しました。

「川内村自由大学」とは、福島県の川内村の人たちと継続的に交流し、川内村から原発……しいては日本の在りようを見てみようという気の長い試みです。母体になっているのは、2010年から明治大学をお借りして続けている「ダイアローグ研究会」ですが、研究会に参加していない方でも参加することができます。
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なぜ川内村なのか……。これは、川内村に縁があったからとしか言いようがありません。川内村には私の30年来の友人である西巻裕さんが移住していました。福島第一原発の事故後、西巻さんを訪ねて川内村に入ったとき、警戒区域を含むこの村が、私の想像とはかなり違っていたことに興味を覚えました。西巻さんがなぜこの村に移住し、事故後も住み続けているのか、その理由の一端をかいま見た気がしたのです。それで、もっとこの村のことが知りたい……と感じるようになりました。正直に言えば、この場所が気に入ってしまったのでした。
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2012年はダイアローグ研究会の人たちを誘って、一泊で川内村に合宿に行きました。ますますこの村に興味をもった私は、「来年は川内村自由大学を立ち上げてみる」と河北新報の記者の方に宣言し、その宣言は新聞記事になってしまいました。
そんな経緯があって、川内村自由大学は「よっこらしょ」という感じで立ち上がったのでした。
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この自由大学には、いくつかのテーゼがあります。
●大きな目的を持たない
●同じことを繰り返さない
●去る者は追わず
●継続こそ力なり
●参加者が少なくても獲得のために努力しない
●あまり緻密に計画しない

大きな目的や目標をもつと、目的のために自爆する恐れがあります。
同じことを繰り返すと飽きます。
人は変るものです。
時間をかけなければ見えないものがあります。
人数にこだわると疲れます。
緻密な計画は柔軟性を阻害します。

というわけで始まった、第一回川内村自由大学は、日程だけが決まっており、全参加者が決定したのはなんと当日でした。来るか来ないかわからない人もおり、それでも奇跡的に全員がちゃんとバスに乗り込むことができたのだから、人間というのはあまり管理しないで自主性にまかせたほうが物事はうまくいくのではないかと思います。

参加者には郡山駅に現地集合、現地解散と伝えてありました。
郡山からマイクロバスをレンタルして、全員で川内村まで移動。その途中、福島在住の作家、玄侑宗久さんのお寺に寄ってお茶をいただき、玄侑宗久さんのお話を聞き記念撮影をする……というミーハーな企画を挟み、川内村に到着したのは4時過ぎでした。
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今回のメインイベントは、川内村の廃校になった小学校の校庭の隅にピザ窯を作り、そのピザ窯でピザを作り、村の人たちとピザパーティーをする……というものでした。ピザはもちろん生地からつくります。トッピングは村でとれた野菜。

しかし、私はピザ生地など作ったことがないので、ピザ生地をこねたことがあるという、参加者の山田スイッチさんと小林麻里さんにすべてを託し、まずはたき火の準備のために薪拾いに行きました。
すると校舎の裏にでっかい切り株があり、あれを燃やせばどんなに美しいキャンプファイアーになるかとドキドキし、拾おうと思うにもあまりにデカイものですから持ち上げられません。

「ねえねえ、あれを燃やしたらすてきだよね」
 参加者のりゅうぞう君にそう言うと、
「ありゃデカすぎて燃えねえだろう!」
と、なかなか拾いに行ってくれません。ちょっと諦めかけたのですが、やっぱりあの切り株を燃やせ……と神の聲が聞こえてきたので、無理やり男どもを拾いに行かせ、切り株を校庭の真ん中に起きました。
 そうこうしているうちに、ピザは順調に焼き上がり、村の人たちもぽつりぽつりと怖いもの見たさで現われ、日も暮れてきて、ビールも飲み始めて、良い感じになってきました。
「いったい、この集まりはなんなの?」
 と、村のおじさんに聞かれたので、
「川内村自由大学です!」
 と、ドヤ顔で答えると、「????」という様子。
「川内村は水がきれいで、ほんとうに良いところなので、ここに毎年来てイベントをすることにしたんです」
「えー、そんなに川内村が好きなの?」
「はい、草野心平さんの気持ちがわかります」
 かつて詩人の草野心平さんは川内村が気に入ってここに別荘をもって執筆をしていたのです。
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 企画をしている私も目的がないので、あまり大きなことも言えず、とにかく「川内村はいいとこだ」を連発するしかありませんが、基本動機が「ここが好き」なので、心は伝わったようでした。
 そのうちに、どんどん村の人が集まり出したので、私は男共に
「早く、切り株に火をつけて燃やしなさいよ、ぼうぼう燃やしなさいよ」
 と、たきつけました。男たちはしぶしぶ切り株を燃やすために薪を燃やしつつも「こんなデカいのなかなか燃えねーよ」とまだぶつぶつ文句を言っていました。
 しかし、努力のかいあってどでかい切り株もがんがん燃え、村のマサじいさんが、得意のひょっとこ踊りをたき火の前で踊り始めました。
 すると青森代表の山田スイッチさんもほっかぶりをしておかめ踊りを始め、ますますなにがなんだかわからない会になってきました。
 そのうちに、私もうれしくなったのでマイムマイムを知らない若者にフォークダンスの指導をしたり、村のおっちゃんたちと演歌を競い合ったりしました。
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 一つ発見があったのは、川内村において演歌の定義は大変難しいということでした。
「女の操」は演歌ですが、「北上夜曲」は歌謡曲だと言われ、では「津軽海峡冬景色は?」「まずまず、それは演歌だべ」「じゃあ、影を慕いては?」「演歌じゃねえ!」そうなのか……。
 そうこうするうちに、なんとなく川内村の人たちと楽しく交流ができたのでした。

 この日は川内村の公民館にみんなで雑魚寝。
 この公民館がものすごく立派なのです。ほんとうにきれいで、お洒落で、寝心地最高なのです。立派な炊事場もあって、朝はみんなで自炊しました。私は夜が遅いと朝が起きられないので、一番最後に目が覚めてしまいました。すると、もう女子たちによってやたらとおいしそうな朝ごはんができ上がっているではないですか。

 ごはんを食べて、再び廃校になった小学校へ。
 ここには西巻裕さんが立ち上げた「感がえる知ろう館」という原発関連のグッズを展示した小さな資料館があるのです。ここで、「ダイアローグin川内村」と題して、朝九時から十二時まで、三時間もみっちりと村の方たちも交えて対話をしてしまいました。なんとなく自由大学という感じです。
 今回、スピーカーとして参加してくれたのは名古屋大学の高野雅夫先生で、地球環境学の研究をしています。先生は「千年持続社会」というコンセプトでいろんなプロジェクトに取り組んでいます。
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 高野先生も、最初は福島に来る時に研究室にある巨大で精巧な線量計を持ってきていたそうです。でも、いつしか線量計の替わりにトロンボーンを持って来るようになった……とお話していました。
 線量計は私も気温計くらいの感覚で持っています。それも、今回は忘れてきてしまいました……。でも、たまに計りたくなるときがあります。計ったからなにがわかるというわけでもなく、なんだか計りたくなるので計ったりします。あの「計りたい」というのは、なにか妙な衝動だなと思います。
 途中で、牛乳を売るトラックが来たので牛乳を買いに行ってもらうと、帰りに売店のおばちゃんが岩魚の干したのをいっぱいくれました。
 朝飯のあまりのおにぎりと岩魚で昼ご飯を食べました。どこからともなく食べ物がやって来るあたり、ほんとうに田舎はすばらしいなと思います。
 天気がめっちゃ良かったので、昼飯後は原発から二十キロ圏内にある清流に川遊びに行きました。このあたりは阿武隈山系から湧き出してくる水の宝庫で、とにかく美しい水の里なのです。川内村は県内唯一、浄化せずとも井戸水が飲める場所。とりわけ、巨大岩盤を流れる清流は美しく、みんなで川に入って水につかり、蛙をつかまえたりして遊びました。
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 川の水は汚染されていないのか? そりゃあもうごんごん湧き出してくるものすごい量の水ですから、汚れている暇がないんだろうと思います。高田島地区では農業用水路に岩魚が上がってくるほど水がきれだそうです。
 その場所から高台に上がると、肉眼で福島第一原発が見えます。
 やっぱり原発も見なくてはね、と村の学校の校長先生だった方の別荘のベランダから原発を見せてもらいました。

 そのあと、津波の被害と放射線の被害も受けた富岡の町に行きました。富岡はまだ事故後のまんま、手をつけられておらず、そのうち復興が始まったら見られなくなってしまうかもしれないので、悪趣味ではあるけれど、何度も行ってしまっています。
 えぐられた岸壁とか、崩れた商店街とか、やはり歩けばみんなしんとなります。だからと言って、自分たちになにができるか……という、そんな思いに心がじりじりしてしまうような場所です。
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 二日目は、川内村にある小松屋旅館に泊まり、村の人たちや、川内村に入って映画を撮り続けている若い女子も交えてみんなで宴会でした。
 川内村の吉田さんは、十キロ圏との境目に牧場をもっていて、事故後もかなり線量の高い牧場に羊の世話をしに通っていました。昨年は東電の仕事の下請けを手伝ったりしており、福島のいろんな矛盾する面を見ている人です。いろんな人がいて、いろんな意見があります。ひと括りに福島県民と言っても、内実はほんとうに人それぞれ。同じ意見の人に会うことがありません。
 参加者同士の交流会は深夜まで続き、夜半に雨が降って、また翌日はドピーカンでした。
 
 郡山でみんなと別れてから、私は福島第一原発で事故前から現在も作業員として働いているハッピーさんと昼ごはんを食べました。ハッピーさんはtwitterでもリアルタイムで原発内の情報を発信していて、七万人もフォロワーがいる人。私とは、偶然に東京の渋谷のライブハウスで知りあいました。
 ハッピーさんの話を聞きつつ、川内村とはまた違う、原発内の現実を知り、頭がクラクラするような不思議な感覚になりました。つまり、原発とひと言で言っても、多層的で重層的で複雑なんです。いろんなフェイズがあり、いろんな問題が小さく緻密に組み合わさって、幾つもの面を構成していて、そしてそれがまた別の問題と繋がりあっている……。そして時間とともに、どんどん変化して全体像も変化していて……。そういうことなんですよね。
 たぶん人間にはこの有機体のような原発という現象をすべて把握することは不可能です。一部から全体を想像してみることしかできません。
 実際に、原発で働いているハッピーさんですら、知っていることはわずかなのです。ましてや、私が知りえることなんて……。
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 それでも、こうして出会って対話すれば、少し元気が出ます。
 がんばってる人がいるんだな、と思うと、どうか今日もご無事でね、と朝起きると祈る気持ちがわいてきます。あの人があそこにいる……。だから、見守っていこう、って思える。

 私は、ものぐさだし、飽きっぽいので、いろんな人の力を借りないと原発の問題はめんどくさくて、ややこしくて、難しくて、とても一人でなんてかんがえ続けていけないんです。研究会に毎回参加してくれる人や、川内村自由大学を続けていく仲間や、川内村の人たちや、ハッピーさん、そういう人たちと繋がっていないと、もう、どうでもいいや、って簡単に思ってしまうだらしない人間なのですね。だから、人といることが大事、人と考えることが大事だと心から痛感しています。
 ですので、わたしを助けてくれる人が一人でも多くいたらありがたいです。誰かがいると、言い出したことは実行せざるえないので、それで、これまでも続けてこれたし、たぶん、これからも、一人じゃなにもできないと思います。

 川内村自由大学は来年もあるし、ダイアローグ研究会は十月に再開します。興味のある人はぜひ参加してくださいね。

もっと「川内村自由大学」について知りたい人は、西巻裕さんのブログにどうぞ!とっても詳細で素晴らしいレポートがアップされていますよ。

ダイアローグ研究会に参加したい方は、randieta1003@gmail.comへご連絡ください。
次回の研究会から通知メールを送ります。
by flammableskirt | 2013-09-29 14:43
金満里がソロ公演を行うという報せが届いた。
そのタイトルも「寿ぎの宇宙」だと言う。

彼女からの告知分を下記に引用する。

『寿ぎの宇宙』作品でそれは死者たちを弔うとこから初めたい、生者は死者と常に共にあることを死者たちに許しを請わなければならず、死者たちもこの世が終焉を向かえることは決して望んではいずだろう死者の概念は生者が勝手に作り上げた、傲慢さの最たるものだから 謂わば死者も生者も、この世を作った共犯者であるそれらを携え、巡礼へと五体投地で、祈る旅に出たいと思います。
それは、宇宙までも含むこの実存世界を、死者たちの力を借りて、とき解き放ち虚実に渡る壮大な祝いとして寿ぎたいという思いです。

もうこうでしか、現在を掴み取っていく、芸術はできないのではないか、という宣言のつもりです。

それは何故かある意味、死者との対等な付き合いは、怖いことでもあり、なるべく避けたいことではありました。
しかし、命を捧げて、祈る、ことでしかすまない、命の形は、そうしてようやく立ち現れる、ものがあるのだ
という作品稽古を通じ、ようやく少し、無用な恐れは必要ない、と、真に目立たいものへ迎えられてきたように思います。


どこか遠いここではない場所から、すっと光が指してくるような、そんな舞台なのではないだろうか。
金満里の舞台を、どう表現していいのか。
彼女は重度の身体障害者である。
そして、障害をもった身体だけが表現しうる特殊な可能性を手にした、
選ばれた舞踏家である。
だから彼女の真似は誰もできない。孤高の舞踏家だ。
存在が祝祭的であることにかけて勝る者なし。
寿ぎ……は、まさに金満里のためのテーマだ。



金滿里ソロ公演『寿ぎの宇宙』
監修 大野慶人  作 金滿里

日時
10月12日(土)14:00 / 19:00
10月13日(日)14:00 / 19:00
10月14日(月祝)14:00

会場  メタモルホール(JR東淀川駅徒歩3分)
  http://www.asahi-net.or.jp/~TJ2M-SNJY/meta/meta_map.htm

チケット  
(前売) 一般 3,500円/学生 2,500円/シルバー 3,000円/障害者介助者ペア 6,000円
(当日) 4,000円 
 ※全席自由・日時指定 
 ※賛助会員割引 各500円引き.リピーター割引 2回目以降 2,500円
 ※会場の都合上、車椅子席は各回1席のみです。12日14:00/13日14:00/13日14:00 の回の車椅子席は売り切れとなっております。

ご予約・お問い合わせ
(劇団態変Officeイマージュ)
TEL  06-6320-0344
E-mail  taihen.japan@gmail.com
チケット予約フォーム http://www.asahi-net.or.jp/~TJ2M-SNJY/form/ticket2.html

PS:メタモルホール、今回の1度に入れる客席は、32席しかご用意できないため、お申し込みはなるべくお早めにお願いします。
  ご予約の状況で、直ぐに満席状況になります。

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by flammableskirt | 2013-09-23 17:59
井筒俊彦先生の「意識の形而上学―『大乗起信論』の哲学」(中公文庫)の読書会を企画しました。
河合隼雄先生が「ユング心理学と仏教」の中に取り上げられておられたことがきっかけで、この本を読みました。難解な本ですが河合先生に影響を与えたという、スケールの大きな井筒哲学に魅せられました。仏教を学ぶ上でも示唆に富んだ本です。専門家ではないので、参加者と寄り道しながら読んでいけたらと思います。
現在10名ほど定員に空きがあります。
よろしければご参加ください。
もう明日ですが、テキストが間に合わなかった方にはコピーをさしあげます。


■「意識の形而上学―『大乗起信論』の哲学」(井筒俊彦著 中公文庫)読書会
第1回 9月24日(火) *以降、毎月第4火曜日に開催
時間:19:30~21:30
会費:1000円(当日お支払いください)
会場:昇龍館ビル303号室(サンガ東京オフィスのあるビルです)
      〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-28
      JR御茶ノ水駅 聖橋口より徒歩5分
      地図:http://www.samgha.co.jp/company/book_store.html
     (1階に佐川急便の集荷所があるビルです。)
問い合わせ:03-6273-2181(サンガ)


■テキスト
「意識の形而上学―『大乗起信論』の哲学」(井筒俊彦著 中公文庫)
ISBN-13: 978-4122039025
*テキストは各自ご用意ください。
■基本的に継続してご参加いただける方を募集します。
■参加希望の方は下記のアドレスに参加希望の旨を書いてメールお願いします。
メールアドレス:
samghaclub@samgha.co.jp
件名:
「大乗起信論」読書会 参加者募集

参加お待ちしています。
by flammableskirt | 2013-09-23 17:18