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by flammableskirt
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2009年 10月 11日 ( 1 )

背が極端に低い。私よりチビは見つけにくいくらいである。
当然のことながら、最初に諦めなければならない職業はスチュワーデス、今で言うアテンダントだった。身長制限があるのは見た目のためかと思っていたが、そうでないということに今日気がついた。
本日、新千歳空港から羽田までの便に乗り、講演をこなしたため着物であり、しかも少々重めの手荷物を持っていたのは中に着替えの着物一式が入っていたからだ。つまり、講演用の高い着物と飲み会用の安い着物。帰りは安い着物を着ていて、鞄の中には一張羅の帯と着物がおさまっていたわけ。
座席の上にある収納棚は私の背では届かない。普段ならシートに足をかけてえいやっと押し込むのであるが、着物だからそういう下品な真似もはばかられ、一番近くにいた……つまりエリヤ担当とおぼしきアテンダントに「すみませんが、これを上げるのを助けてもらえますか?」と声をかける。ところが、そのアテンダントも背が低かったのである。彼女は私に「ちょっと手伝っていただけますか?」と言う。つまり「見てないであんたも自分の荷物くらい自分で持ち上げなさいよ」ということであるが、持ち上げたくても私が爪先立ちしたところで、荷物を棚に押し込めない。それなのにアテンダントは「ちょっとそちらを持ち上げてください」と、いかにも、まったくめんどくさい客だわね、あんたは自分の荷物の面倒も見れないの?と云わんばかりの口調で私に言うのである。
私はスチュワーデスは背が高いものとばかり思っていたので、棚に荷物が上げられないアテンダントに唖然としつつも、きっとこの人は制限身長がぎりぎりでこの職業に就いたのだわ。いや、もしかしてどこぞの相撲取りのように頭にこぶを作って身長を底上げして診査をパスしたのかもしれない……と思いつつ、怒られながら荷物を持ち上げたのであるが、なにしろ私の身長は150センチにも足りないものだから、まったく棚に指先も届かないほど……。かろうじて、荷物は納まったが、これを降ろすことは私にはできないので、このアテンダントに「荷物を降ろす時も手伝っていただけますか?」と、おそるおそる聞いたところ、彼女ははなはだ迷惑という顔を笑顔で隠して「では、到着時に周りにいるアテンダントに声をかけてもらえますか?」とおっしゃった。でも、でも、いつも到着時は乗客が一斉に降りようとしてわさわさしているため、アテンダントに声を張り上げて「すみません、荷物降ろしてください」と叫んでいる自分があまりにみじめゆえ、「そこをなんとか、降ろしに来ていただけませんかねえ、いつもそうしていただいているんですが……」というと、彼女はよほど自分も荷物を降ろすのが苦痛だったらしく「だったら、前の方に置いておきますから、それを受けとってください」と言って、一度上げた荷物をまた降ろして持ち去って行った。その時も、椅子の上によじのぼって「ああ、まったくなんで私が荷物の上げ降ろしなんかしなくちゃならないのよ」という感じで、荷物をため息まじりに降ろすと「これは到着時にあそこの角に置いておきますから」とおっしゃった。
私はなんで、アテンダントは身長制限がありチビではなれないのかよく理解した。私には絶対に無理な職業であるのだ。背の高いアテンダントに声をかければこんなめんどうなことはない。ひょいと持ち上げ笑顔で「オッケイ」と言ってくれる。まして海外によくいる男性のアテンダントなら「こんなのお安いご用さ」って感じでウインクしてくれる。私は自分もチビであるので、きっと身長制限ぎりぎりで採用されたであろう、このアテンダントにはなにかしらの同類相憐れむ的な気持ちを持った。この人は毎日、背の低さゆえに棚の上げ下ろしに苦労しているのであろう。
その後、私の荷物はどうなったかというと、どうやら大変に邪魔だったらしく、最終的に空いているシートに人間のように座っていた。一人分の料金をとってもいいような横柄ぶりで羽田まで悠然と……。羽田に着いたとき私は座席のシートベルトをはずして自分の荷物をもって降りた。自分と同じ待遇でこの荷物が運ばれたと思うと、なんとなくしゃくなような、妙な気分であった。
by flammableskirt | 2009-10-11 20:58