木のこと、町のこと。

雨だ、雨だ。
昨日、庭木の伐採をして正解だった。
朝起きて、いつものように庭の木々草花の様子を点検していたら、つやつやしたツバキの若葉にごっそりと茶毒蛾の毛虫の子どもがくっついているのを発見!この茶毒蛾は毒が強くて、触るだけでかぶれる。たいへんだ、と夫を呼んで朝からツバキと、その隣のカリンの枝を伐採したのだ。

ばっさばっさと切り落としたので、風通しがたいへんよくなり、しかも日当たりもよくなって、また花を植えるスペースができてしまった。植えても植えてもきりがない。毎日フラワーセンターに花を探しに行くのが日課になってしまった。さて、あそこにはなにを植えるか。

と思っていたら、雨。でもこの雨で、ラベンダー畑のラベンダーもぐんと育つだろう。ラベンダーをたくさん植えたいというのは夫の希望だった。あんがいロマンチックなんだな。なんでラベンダーが好きなのか聞いたら、子どもの頃に見た「時を駆ける少女」の影響とか。

明日は、湯河原温泉に橘川さんその他15名が集まって、湯河原温泉合宿勉強会がある。私が今年から定期的に企画しているもので、今回のテーマは「地域活性化」だ。北は北海道から南は沖縄まで地域活性化のキーマンが集まる。湯河原町も地域活性化がうまくいっていないので、地元からも友人たちが参加して、みんなで地域活性化のアイデア交換をしようというもの。この町に二十年近く住んでいるが、町に対して小さくとも具体的なアクションをするのは今回が初めてだ。湯河原生まれの子どもも成長し、父母たちもここに住むようになり、ようやくここが我が故郷と思えるようになってきた。

朝、ばあちゃんと「もう五月も終わりだね。早いねえ」と呟き合った。無益に日々を送っているようでも、物事はゆっくりと変化していく。レラさんが植えて行ったたくさんの庭木は大きくなった。ブルーベリーは日当たりのいい場所の移植した。おととし、うちに泊まって、近所のフラワーセンターでレラさんが大量の庭木の苗を買い込んできたときはびっくりした。
「それ、どうするの?」
「植えるんだよ」
「ええっ?」
ほんとうに、レラさんは勝手に私の家の庭のあちこちに六本もの木を植えて去って行ったのである。この人はどこに行ってもいたるところに木を植える。どんぐりを持っていて、空いている場所があると「そこに植えて」とどんぐりを取りだす。
あれから丸一年が過ぎて、レラさんが植えた木々が毛虫に葉を食われながらもなんとか成長している様子を見ると、なんだか見るたびにレラさんを思い出してしまう。
「モモの子どもたちのために……」
そう言ってレラさんは木を植えていった。モモはまだ十一歳。その、子どもたちのためにレラさんが植えた木を、やはり残したいと思うようになった。庭の手入れが進んだら、この木々はそれぞれに日当たりのよい場所に移植しようと思う。全部、食べられる実のなる木を植えていった。
木を育てようとすると、少しだけ人間中心の時間から離れることができる。

湯河原町も山だらけ。木のことと考えながら町のことを考えるように、できたらいい、そういう発想にはっと身体もついてくるようになってきた。だが、まだかなり頭のほうがデカいが……。
by flammableskirt | 2008-05-29 10:11

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