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by flammableskirt
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「hg」 風琴工房 を観る


下北沢のスズナリに行く。
月曜日に水俣フォーラムの実川さんから電話があった。
「水俣病を題材にしたおもしろい芝居が上演されているんだけど、観てみない?」
「へえ?」
「それがさ、かなりいいんだよね」
水俣病に二十歳のときからかかわってきた実川さんが「かなりいい」というなら観てみたい。彼はいっけん温厚だがニュートラルでかなりシビアな人だ。その実川さんがすすめてくるのだから……とさっそく水曜日の昨日、下北沢まで出かけた。

「hg」というタイトルを聞いて「ハードゲイ?」と一瞬でも思った私はバカだ。
これは「水銀」の化学記号である。
上演は二話構成になっていて、二時間。しょっぱなから緊張感のある舞台。しかもそれがラストまで続いた。一気にのめり込んで観た。まわりの観客も身を乗りだして観ている。
正直、水俣病をこう切るか……と、やられたと思った。
加害者にフォーカシングしている。新鮮だった。

水俣病はこれまでにも石牟礼道子さんをはじめとする優れた文学作品、ドキュメンタリー、写真、演劇を生みだしてきた。重大な社会問題であり、いまもまだ解決したとは云いきれない。関係した方々の多くが存命しているし、年を重ねるごとに問題は複雑化して表現として扱うにはたいへんハードルが高い。少なくとも私には高く感じられて、踏みきれない。そういう自分の背中を押された気持ちがした。やってみなくちゃ。まず踏み込んでみること。それしかない。

上演後に、作・演出の詩森ろばさんとお話する機会をいただいた(実川さん、ありがとう)。興味をもつものの範囲が、とても私と近くて、もっといろいろお話してみたいなあと思った。自分というものを起点にして世界を見ている人だった。大きかろうが小さかろうが、自分であることから逃げようもなく、そこに踏みとどまろうとしている感じだった。

上演時間は二時間、観客はみんな身を乗りだすように舞台に集中していた。緊張感のあるスリリングな舞台。役者さんたちに「水俣病患者を演じる」ということへのとてつもない重荷に全身で立ち向かっている気迫がみなぎっており、等身大の人間のもっている無限の力を予感した。よい舞台でした。日曜日まで上演しています。ぜひ、観てください。面白いです。

「hg」 風琴工房
by flammableskirt | 2008-05-15 11:42