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イベント「耳のまほう」&「クリエイティブ・ライティング講座in大阪」

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7月1日から大阪に行きます。関西での講演はとっても久しぶりなんだ。以前に関西でNHK文化講座でお話したときには、関西の読者のみなさんと居酒屋で交流会。とっても楽しかった。今回も大阪でどんな方たちと出合うかドキドキしています。いっしょに飲んだ人たちはお元気かしら。懐かしいな。盛り上がったオフ会でした。

イベント「耳のまほう」は、ちょっと不思議なイベントなの。企画をしてくれたのは「へんてこ書房」さん。子どもたち一緒におもしろくてへんてこな活動をしている人たち。私が企画している湯河原のサマースクールにも関西から参加してくれました。そんなご縁がつながって、関西でも講演の機会が。でもね、今回の「耳のまほう」の主役は私ではないの。主役は、土井響さん。響さんは20歳の男性。彼はね、生まれてからずっと重度の発達障害として育ち、言葉を発することがなかったんです。ことばがわからなかったの。家族とも仲間とも意思の疎通ができなくて、「知能年齢推定不能」とまで言われていました。お母さんも「私を母親と認識してくれているのかしら」と悩んだこともあるそうです。そんな響さんのところに、ある日、一人の女性が訪ねて来ます。牧野順子さん。「指談」という方法で、意識障害や自閉症の方たちと指でおしゃべりをすることができる牧野さんと出合い、響さんの人生が変わりました。響さんは、いま、指談を通して、お母さんと牧野さんの二人に、ことばを使わない「テレパシー」に近い方法で自分の考えを伝えることができます。とっても不思議でしょう? 誰でもできるってことではないと思うの。人にはそれぞれに得意と不得意があるからね。でもね、たとえば「○」とか「×」のような単純な意思の疎通だったら、わたしにもできるの。たぶん、ちょっとコツを覚えればみんなできるようになると思うの。

今回は、十九歳まで叫んだり、自分を傷つけたりして誰とも会話することも、自分の思いを表現することもできなかった土井響さんが、イベントに出演してくれることになりました。これってすごいことだと思うの。彼は当事者だから、彼がどのように思いを伝えるか、それを現実に生で見たら「ああ、こういうこともあるんだ」ってきっと感じてもらえるから。彼がどうやって「こどばの外の世界」から「ことばの世界」につながったか、その体験を、響くんが伝えてくれます。響くんは「ぼくに起きたことをみんなにも知ってほしい」って、生まれて初めてたくさんの人の前に出ることを決意しました。とっても勇気のいることだと思うの。だから、私も響くんの通訳としてめいっぱいがんばる。うまく、伝えられるといいな。

ふつうに暮らしている方にとっては、あまり必要のないことだと思うの。だけどね、人生では他者の死に寄り添わなければならないような機会が誰にでも訪れるんじゃないかな。たとえば、私は、両親と義父母を看取っているのだけれど、治療の過程で気管切開をして言葉が出なくなったり、植物状態になって意思の疎通ができなくなったり、そういう体験を多くしてきました。お医者さんは「意識はありません」と言うけれど、そんなことないよなあ、わかっているような気がするなあ。そう感じることが多々ありました。実際に母は植物状態だったけれど、意識を取り戻しました。でもそのことお医者さんは見ていないから知らないの。

ほんのちょっとのサインがわかれば、母の意思の確認ができたかもしれないのに、その頃の私にはお医者さんの「意識はない」という言葉に抵抗するパワーがなかったし、サインの送りかたも知らないから、病室でただ心ばかりが焦ってしまって、どうしていいかわからなかった。そんな経験があるので、もし自分が「指談」という方法を前に知っていたら、「諦めない」で、心を通わせることができるかもしれないなと思ったのね。

人はことば以外にも、いろんなサインを送り合っている。そのことに気づくと世界が広がる。私は知っているから、なるべく誤解のない形でみんなに伝えたいと望んでいた。そうしたら、こんな素晴らしい機会が訪れたの。当事者の響さんが舞台に立ってくれるなんて、信じられない。もし、興味があったらぜひ響さんに会いに来てください。あなたに必要がなくても、興味にありそうな方に伝えてくださったらうれしいです。







by flammableskirt | 2017-06-10 16:34