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「もんじゅの廃炉」とこれから

政府が「もんじゅ」の廃炉方針を固めました。「もんじゅ」というのは福井県にある実験用の「高速増殖炉」のこと。きっと名前は聞いたことがありますよね。

でも、高速増殖炉ってなに?って説明できる人は少ないと思います。
増殖炉っていう名前の通り、プルトニウムを増殖させてしまおうというすごい研究。

原発というのは、濃縮ウランを原料にして、人工的に核分裂を起こし、そのとき発生する熱を電気エネルギーに変えて利用しています。

構造はふつうの原発と同じなんだけれど、高速増殖炉では、「高速」の中性子を利用して原発から出たプルトニウムを再利用し、さらに増殖させてエネルギーにしようという、一石二鳥のような夢の計画だったのです。

だから、「もんじゅ」の中では、プルトニウム原料を囲うようにウラン238が置かれています。なぜかというと、ウラン238は中性子を吸収してウラン239に変わる性質があるから。

ふつうの原発は、ウランやプルトニウムの核分裂で飛び出した中性子(2〜3個が出る)のうち1個だけが次のウランにぶつかって核分裂の連鎖が起こって熱が出る仕組み。

「もんじゅ」は中性子の一つを連鎖に使い、もう一つの中性子を周りのウラン239に吸収させようってわけ。するとプルトニウム燃料が燃えているのと同時にさらに新しいプルトニウム239が生まれる。

原発の冷却水っていうのは中性子のスピードを落とすために伝われるのね。だから「もんじゅ」は冷却水は使わず、高速のまま中性子を使うためにナトリウムを使い、プルトニウムを増殖させてしまう。

これは、理論的には凄いけど、想像しただけでも「危なそう」って思うよね。でも、日本は資源がないから「核燃料サイクル事業」の中核として、使用済み燃料を再処理して有効利用するためにプルトニウムを増やす「高速増殖炉」の研究が進められていたの。

でも「もんじゅ」は事故続きで研究は進まなかった。根本的に仕組みに問題があるのは明白。だって最初からうまくいかないのだから。だけど、始めてしまったものを止めることができなくて、「もんじゅ」はまあ、言い方は悪いけれど植物状態のまま延命措置を受けていた感じです。

これは国の研究事業だからたくさん税金がつぎ込まれた。国の税金を使った事業をやって失敗すると、責任問題が生じるわね。豊洲の移転だって、いま問題なってる。

「もんじゅ」も誰がここまで赤字を増やしたってことになるわけだね。当然、誰も責任を取りたくないから、逃げちゃうよね。なんとかうまく四方丸く収めて時間稼ぎみたいなこともしたい。

そういうわけで「もんじゅ」の廃炉方針が決っても、政府は「高速増殖炉」の研究は進めるっていう表明を出したの。でもね、研究を進めるって言っても、また新しい施設を作るとなると膨大なお金がかかるよね。えー?って感じだよね。失敗したのに。

フランスと共同で研究するとか言っていたけど、フランスの態度も微妙だね。高速中性子を当てて、ナトリウム剤を使わずに一気にプルトニウムを増殖させるのは、相当危険なことだから、施設だって安いものは作れないよ。

こんな国益に反することはダメ、って経産省は言ってる。「もんじゅ」の管轄は文科省。「もんじゅ」は国の研究施設だからね。文科省はプライドあるから最後まで廃炉はヤダって言っていたけど、国もこれ以上お金かけるの無理ってことになったわけです。

廃炉ってなると、問題がいろいろ出る。高速増殖炉ではプルトニウムを使います。プルトニウムは核兵器の原料。いま、日本にあるけど、それは高速増殖炉を実現するために置いているのであって、うちら核兵器を作る気は毛頭ありませんよ、ってことで、日本はプルトニウムを持っているわけです。

だから「高速増殖炉やめます」って言ってしまうと「おいおい、だったらそこに持っているプルトニウムどうする気だよ、ちゃんと処分しろよ。日本は核を持たないって約束してるだろう、プルトニウム持ってるってことは核兵器作れるし、ほんとは作る気じゃないの?」って疑われちゃう。

日本人は「私たち核兵器なんか持たない平和が好きな民族です」って思っているんだけど、世界はそう見ないわけ。「いや日本人は第二次世界大戦で気が狂ったことやった恐ろしい国だったから、いまだってなにするかわらない」って思われてるところもあるわけ。

よその国の人から見たら、日本はヒトラーと同盟を組んでたわけだしね。でも日本人は原爆を二つも落とされた経緯もあるし、どちらかといえば第二次世界大戦に関しては、いま、気分的に被害者になっているから、世界の感覚とは若干のズレがあるんだよね。(日本が核兵器を持っていると思っている外国人はわりと多い)

「もんじゅ」が失敗し、廃炉へという決定を安倍政権が出したということは、ほんとうにほんとうに「これ以上、金がかかったらたまらん」ということだよ。だから、それくらいの莫大なお金をつぎこんで失敗したんだ。それはね、税金なのね。バイト代からだって引かれるでしょ。

で、日本の原発事業は「核燃料サイクル」という、「高速増殖炉」の稼働を前提にした壮大な夢の事業だった。ところがその中心にあった「高速増殖炉」が、もはやダメってことになると、全体の見直しが必要。それは誰だってわかる。

この「見直し案」というのが曖昧なの。

原発は危険だというのは、福島第一原発の事故でみんな実感した。だから安全基準が厳しくなって、いま日本のほとんどの原発は稼働していないね。これは歴然とした事実だ。

福島第一原発はそのうち廃炉になりますし、もんじゅも廃炉になります。そうすると、「日本政府さん、そこに置いてある「使用済み燃料」は、どうするのですか?」ってことになる。
使用済みの放射性廃棄物は自分の国内で処分してね、っていうのが世界のきまりね。そうだよね、他人の領土に埋めるわけにいかないし、海洋投棄も禁止されてる。
 
世界的な流れとしては「地中に埋める」って方向で、使用済み燃料、つまり高レベル放射性廃棄物の最終処分が検討されているのだけれど、いま世界で埋める場所が決っているのって、フィンランドと、スウェーデンくらい。

日本の場合は地震国でもあるし、国土も狭いし、みんな不安だよね。だから「最終処分地になってくれるところ、手を上げてくださーい」って国が言っても、16年間どこも手を上げなかった。唯一上げた地方自治体の首長は即刻リコールされて白紙に戻った。

じゃあ、いまその使用済み燃料ってのはどうなっているのかってことなんだけど、それぞれの原発に置けるだけ置いてあって、いっぱいになると青森県の六ケ所村に「仮置き」って形で預かってもらっているわけです。

地表に置いてあるというのが、かなり危険なのだよね。テロとか、地震とか、何が起こるかわからないし。国としては「いつか地層処分したい」って意向を表明している。

いま政府は原発を続けるよ、という方針。ということは、地層処分で地中に埋めるんだから、まだ使用済み燃料出してもいいじゃん、だから原発をもうちょっと続けようよ、みたいなことを考えているふしもあるわけ(杞憂かもしれないけれど)。

莫大なお金を費やした「もんじゅ」の廃炉にだって莫大なお金がかかるし、廃棄物を処分するのにだって相当お金がかかるわけだよ。だってね、最終処分の候補地を調査させてもらうだけで10億円を払うって国は言ってるわけだから。でも10億円をもらっても「うちへどうぞ」というとこがあるかなあ。使えなくなった原発の廃炉費用、いくらかかるかな。何年かかるかなあ。

高速増殖炉の研究を進めるとか、地層処分実験地での研究を進めようなどと言うまえに、「段階的に原発は廃止」の計画を出すほうが現実的ですよね。政府が、将来エネルギーの20パーセントを原子力でまかなう、なんていう曖昧なエネルギー政策を出すから電力会社も「まだやれるかも」って思ってしまうわけ。政府が場当たり的なの。

冷静に「段階的に減らして、二十年後のはゼロ%」とか方針が決まれば、やっと「地層処分をどうするか?」という議論に入れるんだ。そして、「埋める方向で最終処分を決定した」という表明が出せれば、とりあえず世界にも言い訳が立つ。それだって、実現までには百年かかると言われている。候補地選びも含めていろんなトラブルが起きるだろうし、お金がたくさんかかるけど、少なくとも現状の無間借金地獄的連鎖は終わる。
 
一歩、進めるためには「高速増殖炉と核燃料サイクル事業」をここでしっかり諦めて、原発の段階的な廃止を決めて、最終処分方法の検討を進める。
ぐずぐずしているのは一番危険だし、国益にも反する。

原発の問題は八方塞がりであちらを立てればこちらが立たずの、優柔不断政策の結果として、ややこしくなった。利権の争いもあるけど、プライドの争いでもある。原発は儲からない、経産省がそう考えているのは今回の経緯で明白。やめてもっとお金になる政策を考えてほしい。

廃炉事業を公共事業として、社会保障と雇用を整備したり、代替エネルギーの開発に国家予算を投じたり、理工系の大学に「廃炉課」を作って、廃炉技術を世界に売ったりするような、そういうアイデアを考えようよ、と思う。

9月1日に高レベル放射性廃棄物最終処分実験地を見学してきました。
ここはあくまで実験地であって候補地ではないので誤解しないでくださいね。
世界の流れが地層処分であっても、政府主導で地層処理の問題が進められるのは一番よくない。
高速増殖炉は廃炉方向へ向けた政府は、地層処分計画を進めていることを世界にもアピールしたいはず。
プルトニウムをもっている言い訳が必要だから(核兵器になる原料をもっている国に世界は厳しい)。

だけど、放射性廃棄物処分の方針を決める前提に「原発の段階的な廃止、その廃止までの明確な時間」を公約しなければ、
「埋めるんだから原発を稼働して廃棄物をもっと出してもいいでしょう」って言い出しかねないと、みんな不安に思うよね……。
そういう中途半端な政策が、原発の問題をこじらせてきたことをちゃんと見なければ。

最後に、「もんじゅ」を支えてきた技術者の方たち、研究者の方たち。プルトニウム増殖の研究を続けていた方々はたいへん失望しているだろうし、研究への意欲を断たれて長い間、宙ぶらりんのなかで仕事を続け、ほんとうにごくろうだったと感じます。研究者の方たちの知識が廃炉へと活かされるますように。そして「もんじゅ」を受け入れてきた福井県民の方々にとっても、今回の国の決断は「なにを今さら」でしょうし、複雑な心中はとても察することができません。

原発に関わる技術者、研究者の方々の数は激減しています。大学の学課もいまは消えました。でも原発はこれから廃炉へと向います。
安全に炉を解体し、使用済み燃料を処分する方法に情熱をもって研究する人たちが必要です。
文科省には、技術と人を活かす政策を、と願います。
このような状況で、原発推進をいまだ語る政治家の方がいるとしたら、たいへん失礼ですけれども、エネルギー政策と経済政策に関してあまり勉強をなさっていないのだな、と思います。



by flammableskirt | 2016-09-23 17:24