シン・シン・ゴジラ
2016年 09月 05日
「トカゲだよ、縞々があったし」
「でも、案内の人はヤモリって言っていたよ」
私と娘は高レベル放射性廃棄物を地下に埋めるための研究所を訪ねて、穴に潜って見学をしてきた。その時に、地下坑道に小さな爬虫類がいた。
「あのトカゲが、放射能を浴びたらゴジラみたいになるのかなあ」
「ゴジラは、物語でしょ」
「でも巨大化することはあるって言ってたよ」
確かに。
「シン・ゴジラ、面白かったなあ」
シン・ゴジラも娘と二人で観に行って、それからすぐに穴を見学に行ったものだから、ゴジラの世界と現実が混じり合ってしまう。
「ねえ、シン・ゴジラのゴジラはあのあとどうなると思う?」
「えっ?」
「きっと、人間は貪欲だからゴジラを生かしたまま原子炉として利用して、生体エネルギーでタービンを回し発電する仕組みを考えるよ。ゴジラは、植物状態になったまま、永遠に人間にエネルギーを送り続ける」
「そんな……、ゴジラがかわいそう。それは動物虐待でしょう?」
娘が泣きそうな顔をする。
「いや、でもね。中国では漢方薬として珍重される熊の胆汁を採取するために、生け捕りにした熊の腹に穴を空け、カテーテルを差し込み、生かしたままの状態で胆汁を抜き続けるんだよ」
「ひ、ひどい!熊を生きた動物だと思っていないんだね」
「それを言うなら、人間が住んでいる都市に原爆を落とすほうがもっとひどいんじゃない?」
「うーむむむ」
「人間ってなんでもできるのよね。どこまでも残虐にだってなれるのよ」
「お母さん、ダメ。朝からする話題じゃない」
そうだね……。
でも、なぜか頭の中で、無数のチューブを差し込まれスパゲティ状態になったゴジラが、生体エネルギーを放出しながら点滅している様子が浮かんで消えないんだよ。電力会社のマークがゴジラになって、私たちは永遠のエネルギーを手に入れました、なーんて宣伝している妄想が……。