サンカーラ --この世の断片をたぐり寄せて
2012年 10月 19日
「サンカーラ」とは、この世の諸行を意味する。私という意識の経験の蓄積、様々な印象を寄せ集めたモザイク。生きるため身につけてしまった行動や考え方の癖、感情。それらは、いつしか垢のように魂にこびりつき、精神や肉体をも歪める。(本文より)
このような癖や歪みを「カルマ」という言葉で言い表す人もいますが、カルマという言葉には少し抵抗を感じる方も多いようなので、あえて使いませんでした。言葉が消費されてしまうと、言葉がもつ本来の意味から離れてしまい、その言葉がもともと指し示していた深い意味に到達することができなくなるのは、もったいないことだと感じます。
昨年は、この国に蓄積された社会的な癖や歪みが露呈した年でした。そして、社会の歪みのなかに生きている人間も、その歪みに影響されないわけはなく、心や、身体も日々、社会が発する歪んだ言葉、情報に曝されていることを、多くの人がぼんやりと、ことばにはできずとも感じた年だったと思います。
この本は、そのような「歪み」のなかで、自分の背骨をまっすぐにすること、遠くを見るとこ、正しくことばを使うこと、を見失ってしまう苦しさの中で書いたものでした。あえぐような切実さで書いたものでした。多くの人に同じ呼吸の乱れを与えてしまう本であるかもしれませんが、光は満ちています。淡いヴェールのような、光ですが、静かな、ほんとうに静かな希望の光です。
共にこの時代を生きる、たくさんのかたに読んでいただけますように。