戦争と文学みたいなこと

集英社から「戦争と文学」という全20巻の全集が出る。
6月の初旬から配本が始まるらしい。
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第一回目の配本が「アジア太平洋戦争」と「ヒロシマ・ナガサキ」という巻で、
私の短編が2作ほど収められているのだが、そのうちの「似島めぐり」という作品が「ヒロシマ・ナガサキ」の巻に掲載されている。もう一作は「死の池」という短編で、それは「戦争の深淵」という巻に入っている。
どういう作品を選ぶか……は、編集委員の方たちが決めるわけなのだが、私はなぜ自分の作品のなかからこの二作が選ばれたのかが、どうにも腑に落ちないのである。
「似島めぐり」は被曝三世の少女が自分の祖母の過去を尋ねて瀬戸内海の似島を歩く……という話だ。「死の池」はアウシュビッツに取材に出かけた小説家と編集者の話である。もちろん、どちらも戦争を題材にしてはいるのだが、どうして、これなんだろうか……と、なんとも釈然としない。
他にも「ヒロシマ・ナガサキ」を題材にした作品はあるにも関わらず、なぜこれなのか……。
とにかく、私にとっては非常に意外な作品が収録されて、複雑な気持ちだ。
というのは、この二作は原爆を扱った短編集「被曝のマリア」に入っていない短編なのだ。
もっと言えば、この二作は、自分的にはまったく「戦争」をテーマにしていないのである。
シチュエーションだけ借りて別のことを描きたかったといえば、妙だが、そんな感じなのだ。もしその方がよりリアルであるとするなら、小説を書くというのは、不思議な行為だなあと思わざるえない。
by flammableskirt | 2011-02-27 16:14

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