みにくいあひるのこ

娘と「みにくいあひるのこ」について会話する。
「みにくいあひるの子って、どういうことを言いたい童話なのかなあ?」
確かに子どもにとって童話のテーマというのは難解なものかもしれない。
「それはね、タイトルにあわられているんだよ」
「タイトル?」
「そうです。みにくいあひるの子は、実は白鳥だった。では、もし、白鳥のなかにあひるの子が一匹混ざっていたら?」
「えー? みにくい白鳥の子?」
「そうだね。だからこの物語は、みにくい子もいつか白鳥になる、という夢を語っているのではありません。私はみにくいあひるの子だけど、いつか白鳥になれるかも、と思うのは誤りです。あひるの子はあひる、白鳥の子は白鳥なのです」
「なるほど〜、そうだよね」
「みにくいあひるの子は、自分だけが他の子と違うと思います。だから自分の仲間を探して旅に出ますが、みにくいあひるの子と同じ姿の者がいません。それで、絶望して泣きながら水に映った自分を見ると、なんと自分は白鳥でした。自分の姿は自分では見れません。だから自分が何者かは、他人の評価で決まってしまいます。でも、他人の評価はあてになりません。なぜなら、他人もまた他人の評価で自分の価値を決めているからです。同じ価値観をもった人たちはグループになり、違う価値観を差別します。あひるのなかではあひるの姿が美しく、白鳥のなかでは白鳥の姿が美しい、だからあひるに白鳥が混じるとみにくいあひるの子と呼ばれてしまうけれど、白鳥にあひるが混じればみにくい白鳥の子であり、美という価値観も絶対的ではないということを、この物語は語っているんです。いまブスでも、いつか美人になれるという夢物語だと誤解しないように。あひるの子は永遠にあひるです。みにくいあひるの子が美しくなるためには、自分を美しいと評価する価値観をもったグループを探すしかありません」
「そうか〜、大変だなあ」
「モモは大丈夫。うちの家族というグループは、モモが世界一かわいいという価値観のグループだから」
「えー、でも家族じゃん」
「家族だって、子どもをかわいいと思わない価値観のグループもたくさんあるんだよ。頭が良くないとかわいくないとか、性格が悪いとダメだとか……。うちは無条件にモモはかわいいと洗脳されているグループです」
「洗脳されてるのかい????」
「そう、モモちゃん教です。わはははは」
by flammableskirt | 2009-06-11 13:14

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